闇バイト2人の住居侵入未遂、3か月経っても消えぬ恐怖…被害女性「顔が忘れられない」
栃木県益子町で9月に起きた「闇バイト」による住居侵入未遂事件で、被害に遭った80歳代の女性と現場に居合わせた親族が読売新聞の取材に応じ、事件当時の状況を語った。実行役の男女2人は女性宅の前で警察官に取り押さえられた。女性は「(実行役の)顔が忘れられない。すごく怖かった」と話し、事件から約3か月がたった今も恐怖心が消えない。 【一目でわかる】「闇バイト」強盗、防犯対策のポイント
事件は9月11日午後4時頃に発生。女性宅の窓ガラスを金づちで割って侵入しようとしたとして、男(25)と女(22)の両被告が住居侵入未遂罪で起訴された。今月5日に宇都宮地裁真岡支部で初公判が開かれる。
事件当時、女性は1人で自宅にいた。同居の長女は外出中。向かいに住む、おいにあたる40歳代男性がたまたま訪ねると、女性が玄関先でパーカに短パン姿の女と話しているのを目にした。「水道会社のアルバイト」というが、女はなぜか女性の腕をつかんでいた。
不審に思った男性はすぐに警察に通報。すると今度は、家の裏手から男が顔を出した。男は車で逃げようとしたが、様子を見ていた男性の妻が機転を利かせて自分の車を動かし、行く手を塞いだ。
この男女が両被告だ。男はその場で男性に「カエルを探していた」と言い逃れをしたが、女は「闇バイトに応募してこの住所に来た」と観念した。
男は秘匿性の高いメッセージアプリ「シグナル」で、アカウント名が「織田信長」の指示役と通話していた。男性はスマートフォンを奪い、指示役に「闇バイトを使って何かやってるんだろ」と迫ったが、相手は否定。問い詰めても「何の用ですか」ととぼけた。
両被告とのやり取りは約40分間続いた。2人は警察官に連行されて行った。男性は「2人の受け答えはしどろもどろ。自分の頭で考えて動いていないことが明らかだった」と話す。
窓が割られた部屋は女性の寝室で、ガラスを割るためにガスバーナーも使われていた。取材に対して「怖かった」と繰り返す女性は、事件後、恐怖でその部屋に入れなくなった。防犯強化で新たに警備会社と契約し、緊急時に駆けつけてもらえるようにした。窓にも木製の柵を取りつけた。それでも、物音がすると目が覚め、熟睡できない日々が続いているという。(宇都宮支局 折田唯、橋爪悦子)