“矯正”が必要な日本の半導体政策、ベトナムの方法はどこが手本になるのか?
ファブレスは、少数のタレントで勝負できる分野である。1000人規模のチームワークが必要なファウンドリーと違って、ファブレスは十数人~数十人もいれば機能する。要するに、ファブレスは個人技が活きる分野であり、中国人の国民性に向いている形態ではないかと思う。 以上から、日本の最大の弱点はファブレスであり、設計技術者の育成が急務であることが分かる。日本にファブレスが多数できなければ、TSMC熊本工場は閑古鳥が鳴くかもしれないし、たとえウエハが流れたとしても、それは海外向け半導体ということになるからだ。 ■ 世界のファウンドリーとOSAT 今度はファウンドリーの売上高シェアの世界トップ5を見てみよう(図4)。2024年の予測値として、TSMCが62%、韓国サムスン電子が10%、台湾UMCが6%、米グローバルファウンドリーズ(GlobalFoundries:GF)が6%、中国SMICが5%となっている。 日本にはファウンドリーがほとんどない。だから、TSMCを熊本に誘致したわけだ。したがって、TSMC熊本工場が立ち上がれば、とりあえず、ファウンドリー分野の穴を埋めることはできる。 では、ファウンドリーで生産されたチップをパッケージングし、検査するOSATはどうなっているだろうか。図5は、2021年のOSATの売上高ランキング・トップ10を示している。赤く示したOSATは中国企業であり、ピンク色で示したOSATは中国籍ではないが中国に工場を有している企業である。 こうしてみると、OSATの上位10社は、ほぼ台湾と中国で占められていることが分かる。ここに、日本企業は影も形もない。 それではこれまでの分析を基に、以下では、米国、中国、日本の実態を比較してみよう。
■ 米国、中国、日本の実態比較 ロジック半導体のファブレス、ファウンドリー、OSATについて、米国、中国、日本の実態を○△×で評価してみた(図6)。 まず米国についてであるが、エヌビディア、AMD、クアルコム、ブロードコムなどのトップ企業を擁するファブレスは○、TSMCをアリゾナに誘致したファウンドリーは△(立ち上げが遅延している上、Intelは苦戦中)、OSATは△とした。その根拠は、売上高世界2位のアムコー(Amkor)の本社が米国にあるがそれほど強力ではないからだ。 次に中国は、2022年に2800社を超えたファブレスは○、SMICが2023年に7nmの開発に成功したファウンドリーは△(米国による輸出規制により苦戦)、多数の工場が存在するOSATは○とした。 では、日本はどうだろう。5社あるかどうかのファブレスは×、TSMCを熊本に誘致したファウンドリーは△(作るものがあるか分からない上、持続可能性に疑問がある)、そしてOSATは×となる。 要するに、日本には○をつけられる分野が一つもないのである。その上、ファブレスとOSATが非常に貧弱で、この分野の強化が必要不可欠であるが、そのような政策が立案される気配もない。 このような、歪な日本に対して、半導体の新興国の一つのベトナムが非常にバランスの取れた政策を掲げており、これは大いに参考になると思った。以下に紹介する。