西田敏行さんが唯一演じなかった“戦国最恐”の人物とは? 昭和・平成・令和の大河ドラマに残した足跡を辿る
2024年10月17日、俳優・西田敏行さんの訃報が届いた。長年のご活躍に心から敬意を表するとともに、謹んでご冥福をお祈りしたい。本稿では、数多くの歴史上の人物を演じてきた西田さんへの哀悼の意を込めて、NHK大河ドラマの歴史に西田さんが残した足跡を辿る。 西田さんは昭和22年(1947)11月生まれ。初めて大河ドラマに出演したのは、昭和47年(1972)放送で大河ドラマとしては10作目になる『新・平家物語』だった。平家一門の隆盛と滅亡をドラマティックに描いた本作で、西田さんは源氏方である北条義時を演じている。 翌昭和48年(1973)放送の『国盗り物語』で弥八役を務めた後、昭和52年(1977)放送の『花神(かしん)』で山県狂介を演じた。そして昭和56年(1981)の『おんな太閤記』で豊臣秀吉役に抜擢される。乱世を生き抜いて天下統一を果たし、さらなる野望を抱いた秀吉の生涯を魅力的に演じ、正室・ねねの視点からみた1人の人間としての秀吉の姿も体現してみせた。 その後、昭和59年(1984)『山河燃ゆ』では松本幸四郎さんとのダブル主演で天羽忠役を演じ、これが大河ドラマでの初主演となった。さらに昭和63年(1988)『武田信玄』への出演を経て、平成2年(1990)『翔ぶが如く』では主人公・西郷隆盛役を好演。この後平成7年(1995)『八代将軍吉宗』で徳川吉宗、平成12年(2000)『葵 徳川三代』で徳川秀忠を演じ、これらと『山河燃ゆ』を含めた4作が大河ドラマにおける主演作となった。 さらに平成15年(2003)『武蔵 MUSASHI』で内山半兵衛、平成18年(2006)『功名が辻』で徳川家康、平成25年(2013)『八重の桜』で西郷頼母役を務め、平成30年(2018)『西郷どん』では西郷菊次郎役と同時にナレーションも担当している。 そして大河ドラマへの最後の出演となったのが、令和4年(2022)放送の『鎌倉殿の13人』だった。西田さん演じる後白河法皇は、源頼朝と源義経兄弟の分断を謀るなど狡猾な策士としての一面を見せ、朝廷側の威信を守ろうとする「日本一の大天狗」を見事に演じきった。本作の主人公・北条義時(演:小栗旬)が、西田さんが初めて大河ドラマに出演した時の役柄であることも、今振り返れば縁を感じさせる。 このように、大河ドラマでは昭和・平成・令和の3つの時代で計14作に出演。主演は4回と歴代最多を誇る。ちなみに、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の「戦国の三英傑」のなかで、秀吉と家康両方を演じたのは西田さんだけだ。裏を返せば、三英傑のひとりで“戦国最恐”や“魔王”として大河ドラマに登場することの多い織田信長のみ演じたことがないことになる。 あまりにも歴史ドラマ・映画への出演が多いことから、本稿ではとくに大河ドラマにフォーカスして西田さんの功績をお届けした。改めて、素晴らしい演技で歴史の世界の魅力を表現してくださった西田さんに心からの哀悼の誠を捧げたい。 ※画像は大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で西田さんが演じた後白河法皇
歴史人編集部