「海中は『別天地』」 スキューバダイビング 館山(千葉県)
水温は「23℃」と表示していた。スキューバダイビングのインストラクター、成田謙介さん(31)が左手首にはめた腕時計型温度計。 館山市の坂田漁港から約500メートル沖合、水深18メートルの「新漁礁」と呼ばれるポイント。梅雨明けの発表から4日目の7月下旬、地上では太陽がジリジリと照り付け、市内の最高気温はこの日、33・5度を記録した。水温との差は10度超。水温はこの時期としては高めだが、海中は地上に比べたら別天地だ。 タツノオトシゴがつがいで漂い、体長1メートルほどもあるウツボが砂地で体をくねらせる。クマノミがイソギンチャクの間で鮮やかなオレンジ色の体を翻し、ウミウシが岩肌の上を這(は)う――。 成田さんがこの日ガイドした4人の女性客は、こんな光景を楽しんだ。東京海洋大学大学院で魚類行動生態学を専攻した成田さんは、魚の知識を基にしたガイドが強みだ。 ただ、1回の潜水で海中にいるのは1時間が限度。装備などにもよるが、最初は「心地良い」感覚が、人によっては40分ほどで「寒い」に変わってくる。水中では、空気中より25倍も速く体温が奪われるからだ。 女性客らは成田さんのダイビングスクールに戻った後、36度のお湯を浴びて体を温めた。 7~10月は、1年で一番忙しい時期。今年はお盆明けまで連日、ガイドの予定が入っている。成田さんは日々、「別天地」へと案内する。 (斎藤大宙) ◇◇◇ 夏、真っ盛り。梅雨が明けたとたん、体にこたえる暑さが続く。海、山、川、そして街へ。「涼」を探して、房州各地を巡った。