真田広之「SHOGUN 将軍」がハリウッドに与えた変化。本作の日本人プロデューサーに話を聞いた
■原作に強く惹かれた ――そもそも企画の出発点には、ハリウッドで日本文化や時代劇が注目されていることもあったのでしょうか。 もちろんそれはあります。アメリカに限らず、世界的に日本のアニメは見られていますし、観光で日本を訪れる人もどんどん増えて、日本文化への興味関心が高まっています。そのため、日本を題材にする作品も少しずつ増えています。 とくに若い世代は、エキゾチックな外国といった意識の壁のようなものはなく、すんなりと自分たちの生活のなかに日本の文化を受け入れています。
ただ、本作の企画に関しては、ジョンとジーナが強烈に原作に惹かれたからのようです。この作品には、彼らのエンターテインメントへの感性と嗅覚を惹きつける魅力があったのでしょう。この題材を適切な人材と時間、予算をしっかりかけて、これ以上ない完成度の作品に仕上げることを目指しました。 これまでのハリウッドの感覚であれば、在米で英語を話せる日本人俳優をキャスティングし、英語のセリフにするところを、本作ではそれぞれのキャラクターにもっとも相応しい俳優をキャスティングして日本語の物語にし、“本物のドラマ”を追求したのです。
その結果、ハリウッドの映像製作におけるたくさんの扉を開く画期的な作品になり、大成功しました。いまの時代にこれを成し遂げたことに大きな意義を感じています。 ――多面性のある作品だと感じました。日本をはじめアジアの人たちには吉井虎永(真田広之)の視点で見る歴史ドラマであり、欧米の人たちが按針(コズモ・ジャーヴィス)の視点で見れば、未知の世界へのサバイバルアドベンチャーかもしれない。見る人の属性によって物語性が異なります。配信ドラマとして、全世界を意識していたのでしょうか。
全世界でヒットを狙うのは、現実的ではありません。本作はアメリカのスタジオの作品ですから、やはり北米市場を意識しました。ただ、時代の流れもあると思います。ダイバーシティなどの意識が高まるなか、人種や文化を正当に表現しなくてはいけないし、そうでないと通用しない時代になりつつあります。 世界中の視聴者もその部分の保証を求めていますし、日本を題材にした作品で日本人が認めていないなら、興醒めされてしまう。そのため、クオリティーは世界を意識して突き詰めました。