経済対策「103万の壁」引き上げを与党が受け入れ 国会運営見据え苦渋の決断強いられる
政府が22日に閣議決定した経済対策を巡り、自民、公明両党が「103万円の壁」の上限引き上げを受け入れたのは、国会運営で国民民主党の協力を得る必要があるためだ。先の衆院選で大敗し、少数与党で臨む今後の国会は、従来の手法が通用しないことが予想される。経済対策の裏付けとなる令和6年度補正予算案など重要な審議が控える中、与党は苦渋の決断を強いられる形となった。 【図で解説】「年収の壁」は103万円以外にも… 自民の鈴木俊一総務会長は22日の記者会見で、経済対策に国民民主が主張する減税策が盛り込まれたことを問われ、「税調の議論はこれから始まるが、その中で財源や引き上げ幅も含め、結論が出されていくと理解している」と述べた。 先の衆院選で獲得議席が過半数(233議席)を割り込んだ自公は、平成6年に発足した羽田孜内閣以来の少数与党となった。与党の衆院会派勢力は220で、法案成立に必要な過半数に届くには、野党の取り込みが必須になっている。 「手取りを増やす」政策を掲げる国民民主は、非課税枠を現行の103万円から178万円への引き上げを訴える。ただ、政府は国民民主の主張通り非課税枠を引き上げた場合、国と地方で7兆~8兆円程度の減収が見込まれると試算する。 国民民主は財源確保に関しては「政府・与党側の責任」(玉木雄一郎代表)と主張しており、自民重鎮は「財源のない政策はなく、財源を示すのは当たり前だ」と憤りを隠さない。それでも国民民主が強気の姿勢を貫き、与党はべた折れにならざるをえない。 衆院選の結果を受け、与党は衆院の重要ポストの多くを野党に譲った。特に、30年ぶりに野党議員が委員長に就任した予算委員会では審議の難航も予想される。 「数の力」で押し切ることができない与党は、28日召集の臨時国会で補正予算案の成立に向け、経済対策で国民民主に譲歩せざるをえなかった。 自民幹部は「財源論など課題はあるが、これで国会が回る」と安堵(あんど)の表情を浮かべるが、来年1月召集の通常国会では来年度予算案の審議も控えており、厳しい国会運営は続きそうだ。(今仲信博)