保護犬を迎えて、余命半年の妻との生活に起きた変化とは?「近所を犬と一緒に夫婦で歩く時間はなによりも楽しかった」
環境省が公開している「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」によると、令和4年度の犬の処分数は、2,434頭だそう。そのようななか、余命半年と宣告された妻と家族のために、殺処分寸前だった保護犬・福を家族として迎え入れた小林孝延さんは、「救われたのは犬ではなく僕ら家族だった」と語ります。小林さんは、「近所を犬と一緒に夫婦で歩く時間はなによりも楽しかった」そうで――。 【写真】人間にあまり触られることが好きではなかった福 * * * * * * * ◆日常におきた変化 僕たち家族の日常はがらりと一変した。 夜明け頃、僕は布団から這い出すと、眠い目をこすりながら家族の洗濯物をより分けて洗濯機にセット。スイッチを入れてから福の散歩に出かける。 こうしておけば福の散歩から帰って、学校に通う娘と自分のお弁当をこしらえ終わった頃には洗濯が終了。洗濯物を干してから仕事に出かけることができるのだ。 お弁当作りはもう2年以上になるから慣れたもので、前日にはメニューが決まっているから朝はつめるだけだ。 長年主婦雑誌の編集長を務めてきたから、お弁当作りを短時間で片付ける知恵と工夫だけはたっぷりとストックがある。 お弁当作りと並行して朝ごはんの準備。 なんとか薫(妻)の血液の状態をよくしたいという思いから、この頃は青魚やビタミン、ミネラルが豊富な野菜を積極的に食卓に並べるようにしていた。
◆いつかたくさんたまったら 子ども達は朝はぎりぎりに起きてきて、簡単な食事をとったりとらなかったりだから、僕ら夫婦はそれらが落ち着いてから、ゆっくりと朝食をいただくことが多くなった。 幸いにも僕の仕事は朝の時間がさほど早くはないから、朝のうちにだいたいの家事をこなしておけるのがありがたかった。また、そんな仕事の仕方を認めてくれた職場のメンバーにも感謝しかない。 ごはんが終わると洗濯物を干して、ベランダで福のブラッシングタイム。これは薫の担当だ。 人間にあまり触られることが好きではない福だから、ブラッシング中は後ろ足の間に尻尾をたくしこんで耳をイカのようにしているが、繰り返し触られることで人間の手にも少しずつ慣れてきた。 永遠に換毛期が続くのではないか?というくらい、ブラッシングを繰り返すごとに大量の毛が抜けたが、薫はその抜けた毛を愛おしく丸めてジッパー付き保存袋に入れてとっていた。 あるとき、そんなの取っておいてどうするの?と聞くと 「いつかたくさんたまったらこれで福ちゃん人形でも作ろうかな?」と笑っていた。