箱根駅伝だけなぜ特別? 有識者が語る、“ナイキ旋風”以降の箱根とシューズの関係
厚底のカーボン入りシューズが広がったことで、選手のランニングフォームはダイナミックになった。以前は独特な走り方をする有力選手もおり、それも個性だったが、スーパーシューズは靴に合わせた走り方が要求されるため、フォームの個性は無くなってきたと感じる。ケガもしやすくなった。それらはスーパーシューズの功罪の罪の部分だ。一方で、一昔前と比べて駅伝は非常に高速化している。世界で戦える選手の土壌ができてきたというのは、間違いなく功の部分だ。
「アディダス」が一歩抜きん出る?
WWD:開発競争激化の中で、「ナイキ」は21年をピークに徐々にシェアを落としつつ、24年も着用率は42.6%で首位を維持した。ズバリ、25年のブランド別の着用率はどうなると予想するか。
藤原:「アディダス(ADIDAS)」「アシックス(ASICS)」「ナイキ」がそれぞれ30%前後となるんじゃないかと見ている。もしかしたら、「ナイキ」は一気に三番手になるかもしれない。各社拮抗しているが、個人的にはシリーズ最軽量を実現した“アディゼロ アディオス プロ エヴォ 1”を開発した「アディダス」が一歩抜きん出ている印象だ。三つ巴の次が「プーマ(PUMA)」。「プーマ」は学生とのコミュニケーションを深めており、ブランドがサポート契約している大学の選手は皆他社のシューズに浮気せず、「プーマ」を履きそうだといった噂も耳にしている。その次は昨年、全230人の出場選手の中、3人の着用者が出た「オン(ON)」と予想。「オン」は、どの区間でも誰かしらが履いているといったレベルのサプライズを起こすかもしれない。ただし、最終的に験担ぎを重視してシューズを決める選手もいるし、予想はあくまで予想だ。
WWD:箱根で選手に履いてもらうために、ブランド側はどのような取り組みをしているのか。
藤原:日本では箱根に合わせて11~12月にシューズの新モデルを発売するブランドが多いが、選手は夏合宿の段階でいいと思わなければ履いてくれない。そのために、ブランド側の仕込みは春ごろから始まる。大学の合宿所を行脚してとにかく試着してもらう。例えば「プーマ」は、学生の夏の合宿のメッカである菅平高原(長野)に、無料で利用できるリカバリーステーションを24年夏に開設したが、それも学生と接点を広げるのが狙い。シューズは提供するが、学生とブランドとの間にお金のやり取りはなく、お金が発生するのはブランドが大学陸上部に対してサポート契約を結んでいるケース。その場合はブランドが大学側に強化費を支払う。そのように大学とブランドが契約していても、レースでどこのブランドのシューズを履くかの選択権は選手にある。