「恋人同士だった」小学生への性加害を行った49歳男の“おぞましい”主張と「認知の歪み」
本人にとって都合のいい“認知の歪み”
こんなふうに語る者もいます。 〈私とYちゃんはつき合っていました。恋人同士だったんです。Yちゃんは16歳になったら私と結婚するつもりでいました。いえいえ、はっきり言葉にしなくてもわかりますって。愛し合っているなら当然のことでしょう?〉(B 男性・49歳) 12歳の女子児童と交際していると思い込み、性加害をした49歳男性のケースです。女子児童の側には、交際しているという認識はありません。怒ると声を荒らげるBが怖くて、いわれるがままになっていたのだとわかっています。 子どもが、ずっと年齢の離れた大人に好意や恋愛感情を抱くということは、ないわけではないでしょう。しかしそれに乗じて性行為をするのは、間違っています。12歳は性交同意ができる年齢ではないとされています。それが14歳や16歳ならいいという話ではなく、子どもの心身の成長や性についての理解度に見合わない性行為を大人が求めることは、あってはなりません。 事実、Yちゃんという女子児童は身体と精神のバランスを著しく崩しました。母親がその異変に気づき、原因を聞き出して加害行為が発覚し、事件化しました。彼女はようやく悪夢のような時間から解放されましたが、Bのなかでは「女子児童と相思相愛で、交際していた」という現実がいまでも続いています。 性加害をする者が、自分がしたことに対して子どもが見せる反応をどこまでも都合よく解釈する様子が、AやBのケースからわかります。 「子どもは黙って受け入れてくれていた」――みずからの加害行為を振り返り、そう主張する者は多いです。だから自分がしたことは暴力ではなかったという認識でいます。彼らのほとんどは、黙る=受容だと考えているのです。
被害者の70%が経験した“フリーズ”も…性加害者にとっては「受け入れてる」
子どもが加害行為中に抵抗しなかったのは受け入れていたからでは断じてなく、恐怖によって全身が凍りついて動けなかったから、という可能性が高いです。これを「フリーズ(凍りつき)」といいます。意識はあるけれど筋肉が硬直して身体が動かない、発声が抑制される、痛みを感じにくくなる……などといった状態です。 フリーズの概念は心理学や被害者支援の現場では広く知られていて、性別、年齢を問わず性暴力被害者に広く見られる現象だとわかっています。最近ではTonicimmobility(擬死反応、強直性不動状態)という言葉で表されることもあります。 スウェーデンで、レイプ被害女性のための救急クリニックを訪れた女性を対象に調査したところ、レイプ被害者の70%にこのフリーズが見られたことが明らかになりました。抗(あらが)うことができない、抗うと何をされるかわからない状況下で暴力に晒(さら)されたときに凍りつくのは、正常な反応だということです。 まして大人と子ども、全力で抵抗したところで体格の差も腕力の差も歴然としています。身体をこわばらせるのが精一杯なのに、それを受容と思われてしまうのはたいへん理不尽なことです。 そうした思い違いが起きる原因のひとつに、フリーズという現象がまだ世間一般に周知されていないことが挙げられます。