「恋人同士だった」小学生への性加害を行った49歳男の“おぞましい”主張と「認知の歪み」
年端も行かぬ幼い子どもを性の対象とする「小児性愛」の問題は、性をタブー視する日本社会のなかでも特に忌避され社会的議論につながってこなかった。 【写真】昨年女児12人盗撮事件の現場となった“大手中学受験塾” しかし近年、ジャニー喜多川氏による男児への性加害が明らかになったほか、塾講師をはじめ教師やベビー(キッズ)シッターなど、子どもにとって身近な大人による加害行為も表面化してきた。 本連載では、小児性愛障害と診断され、子どもへの性加害を起こした者への治療に取り組む斉藤章佳氏(精神保健福祉士・社会福祉士)が、治療やカウンセリングを通じ実感した加害者特有の「認知の歪み」について解説する。 今回は、子どもに性加害をしていた男性が当時書き残していた日記を引用し、その常軌を逸した「歪み」が発生する理由や背景を見ていく。(全5回) ※ この記事は、斉藤章佳氏による書籍『「小児性愛という病――それは、愛ではない』(ブックマン社)より一部抜粋・構成しています。
子どもへの性加害者の“おぞましい”主張
〈今日のXは最初からすごく積極的だった。「胸、大きくなったね」というと困ったような顔をしていたけど、あれは恥じらって見せて僕を誘っていたんだな。 触り始めると最初は身をよじっていたけど、僕にはわかる。触ってもらって気持ちよくなってきてるんだよね。でも、この関係が周りにバレてはいけないから、素直になれなかったのかな。〉(A 男性・32歳) これは、塾講師という立場を利用し、小学校中学年~高学年の女子児童複数人に性加害をしていた男性の日記です。彼は加害行為をするたびに、どの子にどんなことをしたかを詳細にノートに書き留めていました。 ひとりの子の親が被害を訴えたことで、強制わいせつ罪の疑いで逮捕されました。ほか複数人の子に対する被害も確認されましたが、彼は勤め始めてから2年のあいだ頻繁に加害行為をくり返していたので、明るみに出ていない被害はまだたくさんあると思われます。 彼の綴(つづ)った言葉を読んで、多くの方がおぞましいと感じたはずです。そんなわけないだろう! と怒りに震える方もいるでしょう。その感覚は、正常だと思います。 彼がしていたのは、明らかに加害行為です。子どもに肉体的・精神的に後々まで残る多大なダメージを与えました。けれど彼が見ていたのは「子どもから求めてきた」「子どもはよろこんでいた」という光景。事実とは、正反対です。 被害児童は彼にされたことを苦痛や恐怖に感じていたことがわかっています。痛みに耐えて歯を食いしばり、恐怖で身体が硬直し、目には涙がにじむ……彼はそんな様相を見て「僕を誘っている」「感じている」「イッた(オーガズムに達した)」と興奮していたのです。 Aの認知と現実とのあいだには、埋めようのない齟齬(そご)があります。なぜこんなことが起きているのでしょうか。 クリニックで子どもへの性加害経験者からヒアリングしていると、これは性加害をする者なら誰もが持っている、特有の思考の歪みだと実感します。Aというひとりの男性だけに起きた特異な現象ではありません。