「究極の自撮り」人生切り開いた…フォロワー9万人の写真家Rinatyさん
自撮り写真で、人生を切り開いた女性がいる。大阪を拠点に活動する写真家Rinaty(河合璃奈)さん(26)。撮影機材を担いで雪山にこもるなど究極の1枚にこだわり、初の写真集を出版した。外見へのコンプレックスから解放されたという自撮りの魅力や楽しさを広め、「自分を好きになれる人を増やしたい」と話す。(高木文一) 【画像】日の出を背景に神々しさをイメージした作品(富山県の立山黒部アルペンルートで、Rinatyさん提供)
40キロの荷物背負い雪山へ
一眼レフのセルフタイマーをオンにして、ドレスの裾を持ち上げながら撮影場所へと走り、ポーズを決める。主人公は常に自分だ。カメラ位置やシャッタースピードを調整し、納得できるまで何度でもやり直す。 撮影場所は、樹氷に囲まれた蔵王(山形)や、白銀の立山(富山)、鳥取砂丘(鳥取)など様々。「氷の世界で生きる王女」「絵巻物の挿絵」などテーマを設定し、演出する。立山では、約40キロの撮影機材や衣装を背負い、雪山に入った。
「私だけの世界観を作り込み、うまく撮れた時の達成感は格別。そこに写る自分が大好きなんです」 大阪を拠点に、結婚式の前撮りやセミナー講師などで生計を立てながら、自撮りを続けている。
お姉ちゃんの方がかわいい…
長年、自分の外見にコンプレックスがあった。兵庫県宝塚市の小学校に通っていた頃、友達から「お姉ちゃんの方がかわいいね」と言われて傷ついた。周囲に認められようと勉強を頑張ったが、今度は「ガリ勉」とからかわれたという。
写真部に所属していた高専3年の時、初めて自分で一眼レフを購入した。モデルの撮影を始めたが納得できる作品にならず、「自分を練習台にしよう」と自撮りを始めた。 転機となった一枚がある。夜、自宅の屋上にロウソクを並べ、黒いドレスを着てポーズを決めた。「工夫次第で、私をかわいく撮ることができる」。自分を肯定できた瞬間だった。
悩んでいる人の背中押す作品を
高専卒業後も神戸市の職員として働きながら、自撮りを続けた。X(旧ツイッター)に投稿すると、「美しくてため息が漏れる」などの反応があった。SNSの総フォロワーは現在、約9万人だ。 2021年に退職し、写真家として独立した。22年、国内最大級の審査制写真投稿サイト「東京カメラ部」の10選に入った。今年9月、初の写真集「#セルフポートレートの裏側」(玄光社、税込み2420円)を出版した。
写真集では、約50作品を紹介。撮影に使用したカメラやストロボについて解説し、美しいポージングや構図を手ほどきしている。 容姿や体形にコンプレックスを抱えている人たちも、自分が自撮りで変わったように、何かのきっかけで前向きになれると信じている。「悩んでいる人の背中をそっと押すような作品を撮り続けたい」と話している。