カルビー「本気の全社DX」で判明した意外な最適解、全社データをつなぐキモは現場社員のノウハウ
ポテトチップス、じゃがりこ、堅あげポテト、かっぱえびせん――。人気スナックの品質を保つために、スナック最大手・カルビーがDXの試行錯誤を続けている。 【画像】DXのモデル工場となった、カルビー湖南工場の内部 カルビーでは原料、生産から物流、営業まで、さまざまなデータを持つ。2019年にDX推進委員会を立ち上げ、データをつなげることや、DX人材の育成に取り組んでいる。当初はトップダウンから始まり、ITベンダーから教わることもあったDX化だが、数年でどう変化してきたのか。
■DXは現場人材じゃないとダメ? 「アナログをデジタルに置き換える、泥臭いところからやっています」。こう語るのは、カルビーDX推進部の森山正二郎部長。 最初に手がけたのは、生産の要である工場だった。人手不足もあり、省人化や作業の効率化は急務。そこで滋賀県の湖南工場をDXのモデル工場に指定し、解決策を探ってきた。 たとえば生産日報。多くのチェック項目があり、特に管理職は日報の管理にかなりの時間を要していた。ITツールを活用して日報を電子化するとともに、工場の機械にさまざまな機器を取り付け、自動で検査・記録するなど、人の作業を省くようにした。
揚げたてのポテトチップスの油分・水分・色味の検査も、数時間おきに手作業でサンプリングしていたが、機械を用いて全量を検査するようにした。人による作業がなくなる反面、秒単位でより多くのデータが集まるようになったという。 トップ主導で動き出したDX化だが、徐々に現場スタッフ発案による仕組みも増えてきた。生産状況を見える化したデジタルサイネージはその一例だ。DX推進部や情報システム部はITツールの勉強会を開き、マニュアル動画も作成するなど現場のサポートを進めた。
日々の工場業務も、データで振り返ることができるようになった。昨日の成果を翌日に確認し、歩留まりが悪化していると「次はここを変えてみよう」とほぼリアルタイムで業務改善に取り組む。 AIを用いた事例もある。ポテトチップス原料のばれいしょは、北海道の貯蔵庫から高品質のAランクのいもを送っても、工場に届いたときにはB、Cランクが混じるなど品質が落ちることがあった。いもの品質が落ちれば生産できる製品の量も減ってしまう。事前に不良具合を予測するAIモデルを現場とDXチームが一緒に作るなど、アイデアを徐々に具現化していった。