この冬は「ラニーニャ」で昨年より寒くなる?100年以上前に発見された異常気象要因、○○現象の日本への影響
(白石 拓:作家・サイエンスライター) ■ エルニーニョ・ラニーニャと冬の気温 今年(2024年)は酷暑だった夏に続いて、10~11月も異例の暖かさが続きました。これも地球温暖化のせいだと説明されれば、さもありなんと思いますが、だからといってこれから本番を迎える冬も暖かいとは限りません。日本を含め、世界中の気候に影響を与えるエルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すれば、冬の気温もがらりと変わるからです。 【図】ラニーニャ現象の冬季の天候への影響、インドネシア近海で海水温が上昇し、海水が盛んに蒸発して低気圧の状態になるため、シベリア高気圧の勢力が強まり、日本は西高東低の冬型気圧配置になり寒くなる 近年「地球温暖化」という言葉ばかりが踊り、「エルニーニョ」「ラニーニャ」による気候変動があまり語られなくなりました。しかし、両現象は地球温暖化が叫ばれ始めた時期よりずっと以前の、100年以上前に発見された異常気象要因です。 最初に見つかったのはエルニーニョで、赤道付近の南太平洋で暖かい海水が広がる現象をいいます。その後エルニーニョとは逆に、冷たい海水が広がる現象も見つかり、ラニーニャと名付けられました。地球温暖化がこの大規模な海水温の変動に影響を与えている可能性もありますが、いずれにしろ大昔から、エルニーニョとラニーニャは世界各地に異常気象を引き起こしてきました。 エルニーニョとラニーニャはスペイン語で「子ども」を表す男性名詞と女性名詞です。「ニーニョ」は男性名詞で「男の子」、「ニーニャ」は女性名詞で「女の子」を表します。「エル」と「ラ」は英語で言えば「the」であり、男性名詞と女性名詞の定冠詞です。 しかし、なぜ赤道付近で暖水域が広がる現象を「エルニーニョ」と名付けたのでしょうか。それはこの現象がクリスマスシーズンに顕著になるため、神の子「イエス」になぞらえたからです。英語で「The man」が「男の中の男」を表すように、「エル・ニーニョ」は「神の子」を意味する言葉でもあるのです。
■ エルニーニョとラニーニャの発生原因 太平洋の赤道付近上空には常に東から西へ貿易風が吹いており、海面付近の暖かい海水が西に位置するインドネシアのほうへ吹き寄せられています。その動きに伴って、東の南米大陸西岸では、深海の冷たい海水が海面上に湧き上がっています。それらにより、平常時の南太平洋は西海域の水温が高く、東海域では低い状態が保たれているのです。そして、西のインドネシア近海では集まった暖水から盛んに水が蒸発して気圧が低下し、積乱雲が生じます。 ところが、数年に一度貿易風が弱まるときがあり、その場合暖水を西に押す力が小さくなり、同時に南米西岸で冷水が深海から湧き上がる量も減ります。結果的に平常時に比べて暖水が東へ広がります。そのため、積乱雲が発生する海域も東へ伸びることになります。これがエルニーニョです。 ラニーニャ現象はこれとは逆に、貿易風が強まることで、暖かい海水が西のインドネシア近海の狭い地域に厚く押し込められます。そして、南米西海岸付近で海底から湧き上がった冷水が西へ広がっていきます。