外来のビール大麦、150年間の育種過程でウイルス病抵抗性遺伝子を取り込み日本に定着
岡山大学資源植物科学研究所は1979年に大麦系統保存施設を設置してから半世紀以上にわたり、オオムギ遺伝資源をムギ農耕圏全域から収集・保存している。武田教授らの研究グループは、スカイゴールデンとサチホゴールデンの遺伝情報を、ゲノム解析が進んでいる品種や特徴的な品種と比較してウイルス抵抗性がどのように取り込まれているか調べた。
RNA配列を解読し、SNPを解析
武田教授らは、開花後20日目の未熟種子のRNAの配列を解読した。遺伝情報のバリエーションを示すSNP(スニップ、一塩基多型)を解析したところ、スカイゴールデンでは2419個、サチホゴールデンでは3058個あった。
スカイゴールデンではSNPが染色体のウイルス抵抗性遺伝子や色素関係の情報がある近傍の2カ所に特に集まっていた。サチホゴールデンにはウイルス抵抗性遺伝子の近傍とみられる場所にSNPの顕著な集まりは見られず、スカイゴールデンと比較すると、抵抗性遺伝子のみを在来品種から受け継いでいた。
SNPの分布から「ウイルス抵抗性遺伝子が育種によって導入されていく過程で食用の親の別の遺伝子ももれなくくっついてくるらしい」と武田教授は話す。別の遺伝子の中には醸造品質に悪影響を与える遺伝子も少なからず含まれると予想されている。
その遺伝子を特定して選抜の基準となるマーカーにできれば、有用な遺伝子だけが効率良く導入されているどうか、種から形質が特定できるまで栽培する手間を省いて判定できるという。こうした開発努力がよりおいしいビールを醸造できる大麦に結実する日を期待したい。 (長崎緑子/サイエンスポータル編集部)