惨敗、男子バレーの向かう先とは?
世界のトップは容赦なかった。日本が「bick」を使ってくると思えば、バックアタックを打つ選手をサーブの餌食にした。パワフルなジャンプサーブがピンポイントで打ち込まれ、福澤は何度もしりもちをついた。それだけではない。ロシアはサーブ時に前衛の3人が壁のように立ちはだかり、サーバーの動きとボールの軌道を隠す「スクリーン」で日本の守備を混乱させた。露骨にすれば反則だが、それをロシアはギリギリのところで巧妙に使ってきたのだ。 越川は言う。 「それが世界のスタンダード。いいサーブを打つだけでなく、組織として相手を潰すことも必要だ」 もちろん、相手を吹き飛ばすパワフルなサーブだけが、“攻めるサーブ”ではない。横田や山村宏太のように、ジャンプフローターサーブで相手の嫌なコースを狙っても、守備を崩す効果は十分にある。実際、ブラジル戦の第2セットは、コートに入った6人が積極的にサーブを打ち、互角の展開に持ち込んだ。 それがわかっていながら、日本はなぜ、ほぼすべての試合でサーブの積極性を欠いたのか。ゲーリー・サトウ監督はイタリア戦の後、こう言及している。 「確かに選手の中には、ミスを恐れて確実に入れたいと思っている者もいる。100パーセントの力加減で打てば、スピードは出るが入らないこともあるだろう。ハイリスクハイリターンだ。たとえパーセンテージを下げても、自分が気持ちよく打てるポイントを探す練習をしているが、残念ながらアグレッシブには打てていなかった」 攻めるサーブはリスクが付きまとう。一度でもミスをすれば、次は「入れていこう」と考えるのが人間の心理だ。しかし、弱気なサーブを打てば、必ず相手に付け込まれるだろう。ならば、選択肢は限りなく絞られる。たとえミスになっても、サーブで攻めて相手にプレッシャーをかけるのか。それとも、確実に入れて相手にいい状態で攻撃させるのか。のちの展開を考えれば、どちらが正しいかは明白だ。