惨敗、男子バレーの向かう先とは?
サーブがラインを割る。まるで再現VTRのように。何度も。ある者は頭を抱え、またある者は天を仰ぐ。そのたびに、スタンドからは大きなため息が漏れた。 吐き出されたのは落胆か。それとも失望か。第1戦のアメリカ戦。最後はため息もなかった。マシュー・アンダーソンのバックアタックが日本のコートに落ちた瞬間、6月にリニューアルしたばかりの京都府立体育館は、ただ静まり返るしかなかった。 日本の狙いははっきりしていた。セッターの今村駿は、後衛の選手が打つ速攻に近いバックアタック、いわゆる「bick」を軸に攻撃を組み立てた。前衛のミドルブロッカーがおとりになり、背後からウイングスパイカーの越川優が高さのあるバックアタックを打ち込む。アメリカのブロックを“ずらす”効果はあった。 第3セットの序盤は、途中から入った横田一義のジャンプフローターサーブが機能した。パワーでは見劣りするが、相手が嫌がるところを確実に突いた。6-5からサービスエースを含めて4連続得点。終盤は、越川が強烈なジャンプサーブで攻めた。一時は2点差まで詰められたが、アメリカに傾きかけた流れを断ち切った。最後は福澤達哉のブロックポイントで25-21。世界のトップチームから、貴重な1セットをもぎ取った。 しかし、大会を通して奪ったのは、この1セットのみ。終わってみれば5戦全敗。なすすべなく完敗した。そもそも、世界ランク17位の日本にとって、大会の仕組み自体が不運だった。対戦相手との実力差はあまりにもかけ離れていた。世界ランク1位のブラジルに、ロンドン五輪金メダリストのロシア。アジア王者のイランも、12位の世界ランクをはるかに超える力を持っている。日本にとっては、間違いなくすべてのチームが格上だった。 考え方を変えれば、レベルアップの絶好の機会だった。それでもなお、付け入る隙さえ与えられることはなかった。 明暗を分けたのは、はっきりとサーブの差だ。 日本のサーブには意図が見られなかった。コースを突くのか。レシーブが苦手な選手を狙うのか。パワーで弾き飛ばすのか。その、いずれでもなかった。ただ、ミスを恐れたセーフティなサーブを、相手のコートに「入れていただけ」だ。チャレンジする精神がなければ、格上との対戦から得られるものは何もない。