Yahoo!ニュース 意識調査で「日本でも尊厳死を」が83% どう読むべきか? 立岩真也・社会学者
問題はその「尊厳死」が何であるのかが、それを主張している人たちにおいても、以下に記すように、はっきりしていないということである。記事中に出ている「尊厳死協会」の副理事長の長尾氏は、今は自分は「尊厳死」を主張していないといった発言もしている。「尊厳死協会」という名称も改称されるそうである。人により時により言うことが違う。これは困る。 賛否を問うのだから、さらにこれはまさに「生死」に関わるのだから、例えば脳死の是非を巡る論議では、それなりに細かな議論がなされたのと同じく、あるいはそれ以上に、いかなる場合に是とするのか、こういう議論こそ大事なのだ。「タブーなき議論」には賛成だが、その議論のための前提が存在していないということである。 それでも一つ加えておくと、この産経新聞の記事のタイトルにある「タブーなき」には「終末期医療」の「コスト」についても「正直に」という意味合いが込められているように感じる。そしてそのことに関する「漠然とした不安」が賛成票の多さに関っているのではないかとも思うーーこのことは私のツィッター等に対する反応を見ても感じることだ。安楽死尊厳死の是非についての議論をするためにも、医療費等、費用についての具体的な情報をもとにした議論がされる必要があっただろう。 --------------------- 立岩真也(たていわ しんや)社会学者。立命館大学大学院教授。関連する著書に『良い死』『唯の生』(筑摩書房)、『生死の語り行い・1――尊厳死法案・抵抗・生命倫理学』(有馬斉との共著、生活書院)等がある。