「子どもの言語能力を高める」ために、幼児期の大切な4つのポイント
子どもが成長するために大切な、インプット=聞く力、アウトプット=話す力を、バランスよく伸ばす方法について、脳科学の視点から考えてみましょう。脳科学者の西剛志さんがお話します。 【マンガ】「集中力が高い子ほど、乳幼児期に体験している「フロー状態」とは? ※本稿は『PHPのびのび子育て』2020年7月号から一部抜粋・編集したものです
「聞く力」「話す力」の重要
これまで「聞くこと」と「話すこと」は、脳の中の別々の部位が働くと考えられてきました(脳のウェルニッケ野=「聞くこと」、ブローカ野=「話すこと」を担当)。 しかし、最新の研究によって、私たちは誰かと会話しているとき、意外にも「聞く部分」が活性化することがわかってきました。 面白いのが、英語を母国語レベルで話せる人の例です。英語が苦手な人が相手に話そうとすると「話す部分」のみ活性化して「聞く部分」はほとんど反応しないのですが、英語が流暢な人ほど、「聞く部分」が活性化するのです。 つまり、うまく話せる人ほど、"相手がどんなことを話すかを予測して聞く"という力が高いことがわかってきました。 一方、音声を聞くと口が動いてしまうことがありますが、聞くときに「話す回路」(運動を司る部分)まで活性化することもわかっています。子どもは母親から言葉を聞くと、同じ言葉をそのまま返そうとしますが、まさに、聞くことと話すことは表裏一体なのです。
聞く力と話す力のバランスが悪いとどうなるのか?
ここでは、この2つの力と、そのバランスについて考えてみましょう。 ・「聞く力」とは? 音声を聞き取る力には2種類あります。それは「聞く力」と「聴く力」です。聞こえてくるものをキャッチするのは「聞く力」、集中して積極的に理解しようとするのが「聴く力」です。聴く力が高い子どもは、コミュニケーション力も高く、学習力にも直結することが示されています。 ・「話す力」とは? 自分の考えやアイディアを言葉を通して表現する力です。相手にもわかりやすく話せると、将来どんな分野でも成功しやすくなります(自己肯定感まで高まることも示されています)。わかりやすく話すには、言語力だけでなく、相手の気持ちを理解する力や論理的な力も必要とされます。 聞く力はある>話す力がない場合は... ハーバード大学の研究では、自分のことを話すと、脳の司令塔とも言われる「前頭前野」と報酬系が活性化することがわかっています。聞いているだけで自分のことを表現できないと、脳が活性化しにくく、本来の能力を発揮できないということなのです。 幼少時代に内気な子は、相手や周りの目を気にして、十分な自己表現ができない場合もありますので、愛情をもってたくさん話しかけてあげることも大切です(そうすることで、社交的になるという例も多数報告されています。 話す力はある>聞く力がない場合は... 相手の話を聞かずに自分のことばかり話す子は、自分の欲望を抑制することができない傾向があるため、脳の中でもセルフコントロール力を司る前頭前野の活性が落ちる傾向があります。 実際に話が長い人は、前頭前野の活性が低くなり、自分がどこまで話したかを忘れたり、記憶力まで落ちることも報告されています。また、話の内容を理解する力も落ちるため、ひとりよがりになりやすく、学習能力にも影響することがあります。