なぜ「足立区」が一番危ないのか…大地震で死者・負傷者数が多くなるかもしれない「地域の名前」
2011年3月11日、戦後最大の自然災害となる東日本大震災が発生した。あれから13年、令和6年能登半島地震をはじめ何度も震災が起きている。 【写真】日本人が青ざめる…突然命を奪う大災害「最悪すぎるシミュレーション」 しかしながら、これから起きうる大きな自然災害(首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火)について本当の意味で防災意識を持っている人はどれほどいるだろうか。 もはや誰もが大地震から逃れられない時代、10刷ベストセラーの話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。 (※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)
「液状化」にも要注意
埋め立てられたような土地は、地震の揺れだけでなく、液状化にも注意が必要だ。 市域の7割超が埋め立て地である千葉県浦安市は東日本大震災で住宅の液状化被害が8700棟に上った。全国的にみても埋め立てられた場所では液状化による被害が後を絶たない。 東京都が公表した「都心南部直下地震」の被害想定を見ると、東京都内で全壊棟数、死者数、負傷者数ともに最多なのは、23区の北東部にある足立区だ。荒川と隅田川に挟まれる千住地区などは平坦な低地で、泥と砂が堆積した軟らかい地盤であるため、地震の揺れが増幅しやすいと言われている。 足立区を含めた江東区、江戸川区、墨田区、葛飾区の5区は全域が低地で、一部では地表面の海抜が満潮時の海の高さよりも低い「海抜ゼロメートル地帯」になっている。 関東学院大学工学総合研究所の若松加寿江研究員は「低地の中では地下が埋没谷になっていて川や海が運んだ軟らかい土砂で埋められている谷筋は一般に揺れやすい。首都圏で言えば、葛飾区から足立区を経て埼玉県三郷市に続く約400年前に利根川が流れていた低地(一般に中川低地と呼ばれている)と、足立区・荒川区・北区を経て埼玉県川口市に続く荒川に沿った低地(荒川低地)が危ない」と分析する。 埋没谷の谷筋は100年前の関東大震災の震度分布図を見るとわかりやすい。 関東大震災で震度6弱以上だったと推計される場所は、震源域内にある神奈川県や房総半島南西部を除くと、前述の中川低地と荒川低地に分布しており、2021年10月の千葉県北西部地震で震度5強、5弱を観測したエリアとも一致している。揺れやすい地盤は100年経っても変わっていないのだ。 さらに遡って今から約560年前、室町時代の1460年頃に描かれた絵図には、現在の東京・台東区千束や上野不忍池の付近、水道橋・飯田橋、文京区白鳥橋、港区の溜池山王駅の周辺、麻布十番から古川橋には沼地がある。日比谷付近は入り江になっている。 これらの沼地や入り江だった場所は、関東大震災でも住家全壊率が際だって高くなっている。日比谷入り江は、1600年代に埋め立てられ大名屋敷となったが、現在の日比谷公園はかつての入り江のど真ん中にある。東日本大震災のときには日比谷公会堂付近が陥没した。埋め立てから400年近く経っても地盤が軟弱であることには変わりがないのだ。