世界遺産「ペトラ遺跡」を襲う洪水や干ばつ、古代の治水復活で救えるか、「天才的」と識者
古代の知恵を活用する
ペトラとその周辺の地域を管理する当局は、公園の職員が洪水に備えられるよう、大規模な訓練プログラムと避難訓練を実施してきた。降雨はデジタル警戒システムによって追跡され、洪水が起こりそうになれば警報が発せられる。 2022年末に発生した洪水では、こうした準備が功を奏した。1700人の観光客と職員は数時間以内にペトラから避難し、負傷者はゼロだったのだ。 過去からの教訓はまた、将来の過酷な状況にも生かされる。「この遺跡には、古代の知恵が物理的に組み込まれています」とハーマン氏は言う。「現代的な解決策と組み合わせることで、ナバテア人の水管理システムは、ペトラを鉄砲水に適応させるうえで最大限のポテンシャルを発揮することができます」 過去3年にわたり、ファラハト氏は地域社会の人々と協力して、古代のダムと段々畑の清掃と修理を進め、ナバテア人の創造物を復活させてきた。この作業は冬の雨期にたまる泥と岩を毎年取り除く必要があるため、遺跡を保護すると同時に雇用も生み出している。 こうした取り組みを通して、ファラハト氏は、ナバテア人の仕事に改めて称賛の念を抱くようになった。「私は今、ナバテア人が遺した段々畑に夢中です」とファラハト氏は笑う。「彼らは水を集めることに関しては天才的でした。ナバテア人の足跡をたどることで、われわれはきっとこの問題を解決できるでしょう」
文=Andrew Curry/訳=北村京子