視覚障がい者も使いこなせるスマホ、オーダーメイドで届ける
記事のポイント①スマートフォンは視覚障がい者にとっても便利に使えるツールだ②しかし、うまく使いこなせている人は少ないのが現状だった③リモートアシストは視覚障がい者が使いやすいスマートフォンを発売した
スマートフォンは、弱視や全盲など視覚障がいを持つ人にとっても、便利に使えるツールだ。遠くの文字を写真に撮って手元で拡大したり、音声の道案内を活用したり、様々な日常生活の不便さを解消する。しかし、うまく使いこなせている人は少ないのが現状だ。カメラや通信での遠隔支援事業を行う「リモートアシスト」(大阪府茨木市)はこのほど、視覚障がい者が使いやすいスマートフォン「エルビー(LB)フォン」を発売開始した。(ライター・遠藤一)
エルビーフォンは、視覚障がい者専用のスマートフォンで、遠隔援護サービスも付けられるのが特徴だ。 エルビーフォンを企画・販売する藤井慎一・リモートアシスト社長によると「視覚障がい者は高齢者が多い。スマートフォンはテキストデータを読み上げたり、音声を聞きながら指の動きで操作する機能など、視覚障がい者をサポートする機能もあるが、使いこなせるのは、ごく一部の方。大半の方は使いこなせない」と言う。 スマホを使いこなしている視覚障がい者であっても、音声ナビゲーション中は他の機能が使えないなどのストレスや、「画面の拡大はいらないが文字だけを大きくてほしい」など個別のニーズもあると言う。
■困りごとに合わせたオーダーメイドのスマホづくり
エルビーフォンを開くと、ホーム画面は弱視者が見やすい黒背景だ。アイコンや文字も大きく設定してある。 弱視者が使う「拡大」「読み上げ機能」も、一般的なスマホのように設定しなくても、手元に届いた時にすぐに使えるようになっている。 拡大のスーミングも、通常のブラウザの限界を超え、より大きく表示できる。 さらに読み上げ機能の操作についても、iPhoneのボイスオーバー、またAndroidのトークバックよりも単純化した動作で、わかりやすく操作が可能だ。 指が通過しただけで読み上げ、弾く動作で次の段落や箇所へ即座に移動するなど、ストレスなく使える工夫がされている。 電話着信の際にも、表示を確認せずとも、画面を2本指で触るだけで通話ができるなど、見えにくい人でも最小かつ簡単な操作で、素早く行える。 エルビーフォンの購入者には事前にヒアリングが行われる。その人の日常の困りやITスキル、必要なアプリを聞き取り、視力に合わせた色合いやフォントにカスタマイズする。その人に合った環境があらかじめ設定されたオーダーメイドのスマホが届く。 さらに、希望する人には「遠隔援護サービス」も追加できる。リモートアシスト社製の専用ウェアラブルカメラを通じて、訓練を受けたスタッフが、家の中の困りごとをサポートする。 カメラの端子をエルビーフォンのUSB端子につなぐと、自動的にアプリが起動、カメラのボタンを押すと通話が開始できる。 例えば、家電の説明書を探したり、その文面を読んでもらうなども、ボタン一つで気軽に聞けるシステムだ。 藤井社長は「弱視の人は、見えづらさが徐々に進行していく。今のうちにスマートフォンを使いこなせれば、全盲になった時に支援などの選択肢も広がる」と語る。