コメ不足は今年だけの問題ではない?フィンランドとの食料自給率の差からも見えてきた、日本の食料、これだけの不安材料
コメ不足で浮き彫りになった日本の食料不足への不安
日本では、オレンジの果汁が手に入れにくくなった6月の「オレンジショック」に続いて、8月はコメ不足になり、スーパーの棚からコメが消えた。日本の食料自給率は低く、農林水産省によると2023年はカロリーベースで38%だが、コメの自給率はほぼ100%である。しかし、コメ不足は今も続いており、将来の安定した食料供給について不安を感じさせるものになった。 【写真】コメ不足は今年だけの問題ではない 一方、フィンランドの食料自給率は高い。 2020年の自給率はオーツ麦196% 、大麦100%、小麦 95%、豚肉107%、鶏肉96%、牛肉85%、卵111%、根菜93%、トマト62%、苺60%などとなっている。ロシアがウクライナに侵攻した2022年春、スーパーの棚から一時的にパスタ類が消えたことがあったが、食料供給に対する不安感は高くない。 ここでは、自給率の違いや食料の安全保障、また、より広い生活の安全について、2つの国のあり方を比較してみたい。
そもそも日本は食料自給率の算出法が複雑?
まず、そもそも食料自給率とは何だろうか。日本の農林水産省は、次のように説明している。 1 単純に重量で計算する品目別自給率 2 食料全体について共通の「ものさし」で単位を揃えて計算する総合食料自給率 a 熱量で換算するカロリーベース b 金額で換算する生産額ベース 農林水産省が発表しているのは 2のa とbで、aのカロリーベースの数字は低くなる。食料自給率が38%というのはそれによるものだが、bの生産額ベースなら61%になる。 一方、フィンランドで使われているのは、1の品目別自給率である。それは、国内の生産量と消費量の重さでの割合で、その2つが同じ場合、自給率は100%になると大筋で考えることができる。ただし、食料生産には種子、肥料、飼料、水、電力、石油などのエネルギー、流通、輸送なども必要だ。それらは、国内だけで完結するのではなく、輸出入の関係で国外とも繋がっており、完全に自国内だけで自給している国はほぼない。不足するものは輸入し、余剰は輸出や備蓄に回す。品目別自給率は、国内市場と国際市場の関係も含むものでもある。 また、フィンランドにはカロリーベースや生産額ベースでの自給率という考え方はなく、そうした計算方法は使われていない。実は、国際的にも主流は品目別自給率である。 単純に考えて、各品目をカロリーで換算したり、金額で換算したりするのは煩雑になる上、その正確さも不確かだろう。カロリーは、品目毎に常に同じわけではなく推定値である。また、カロリーベースではカロリーを満たすことに主眼が置かれることは、農林水産省が提示する食事例を見てもわかる。穀類や芋類が中心になって、タンパク質や新鮮な野菜、果物に欠ける食事になるのだ。それは、国民の健康やウェルビーイングを考えた食料政策と言えるだろうか。 一方、金額で換算する生産額ベースでの算出には、輸入額と輸入単価が含まれる。食料自給率は年毎の計算になるので、日々刻々と変動する為替相場を年平均にならして計算することになる。しかし、使われた為替相場の値は示されないので、前年と比較した上下の揺れの正確さはわからない。