コメ不足は今年だけの問題ではない?フィンランドとの食料自給率の差からも見えてきた、日本の食料、これだけの不安材料
国家の食料への関わり方が大きく違う
さらに、食料自給に関するシステムの違いもある。日本で、それは農林水産省が担当している。フィンランドで農林水産省に当たるのは農林省だが、食料自給を担当しているのは経済・雇用省の部局で、安定供給センター (National Emergency Supply Agency)という名前の別の機関だ。ただし、農林省は自然資源研究所 (Natural Resources Institute)という研究調査機関を持っている。その2つを順に見てみよう。 安定供給センターは、平時・緊急時を問わず社会が機能し、市民の生活の安全が確保されることを目的する政府機関で、企業や第三セクターと共働している。食料自給はその活動の一部だ。食料自給にはエネルギーや気候変動、金融財政、医療、産業、ロジスティックス、デジタル化、サイバー空間も含めた危機管理、国際的な政治情勢など幅広い課題が関連してくる。それらのシステムが連動して機能するための計画から運営、保全に至るまでのプロセスを担当するのが安定供給センターだ。起こりうる問題や障害の予測、その修正や解決も行っている。 こうした大きなシステムを支えるのは、市民のウェルビーイングを重視し、確保しようとする国家である。また、その背景には有機的に息づく社会像があるだろう。 こうした幅広いアプローチに比べると、食料自給力の維持向上のためには農地の確保、単収向上、労働力の確保や省力化等の技術改善が必要という日本の農林水産省の提唱は、非常に限られたものと言わざるを得ない。 組織的には、安定供給センター には約100人の職員がいる。役員26人の内、10人が女性だ。男女平等を進めるフィンランドとしては、女性の数がやや少ないが、メンバーは社会保健省、内務省、外務省、防衛省、フィンランド銀行、公共放送、企業、職業組合、医薬品産業、地方自治体などから選ばれていて目配りが幅広い。