再び五輪世代を託された大岩剛監督への期待感。過去に例を見ない早期着任&挑戦2度目のメリットは? 前回大会の経験が強みに
期間の長さはプラスに働く
また、今回は過去の五輪チームで率いた指揮官たちと比べ、圧倒的にチームに携わる期間が長くなった。 2016年のリオ五輪(手倉森誠監督)、2021年に行なわれた東京五輪(森保一監督)の時はオリンピック本大会が終わり、1年以上が経過したタイミングでの就任だった。大岩監督が率いたパリ世代でも2021年12月に任命され、活動期間は約2年9か月。しかし、今回のロス世代は3年6か月以上の時間がある。そうしたスパンの長さはアドバンテージになり、選手の把握もスムーズにいく可能性が高い。 今回の会見でラージグループの形成に力を入れる意向を示しており、より多くの選手を手もとに呼ぶうえで期間の長さはプラスに働く。 「パリ・オリンピックのチームでは87人の選手を招集しましたけど、100人、110人、120人にしていく作業が重要だと思う」とは大岩監督の言葉。五輪本大会では誰が呼べるか分からない。そうした問題をパリ五輪世代で味わっており、大会後の総括でも「A代表における五輪世代の分母を多くすることと同時に、A代表に漏れていても戦える五輪年代の選手がいくらでもいる状況にしないといけない」と話していた。そうした課題と向き合ううえでも、率いる期間が長い点はメリットになる。 スタッフの経験値も大岩監督にとっては心強い。GKコーチの佐藤洋平氏(現・鹿島アントラーズGKコーチ)はリオ五輪に出場したU-23日本代表などでGKコーチを担当。羽田憲司氏(現・鹿島コーチ)は大岩監督とは旧知の仲であり、パリ五輪世代から引き続き参謀役として参画する。 また羽田氏は、船越優蔵監督が率いるU-20ワールドカップ(来年9月にチリで開催予定)を目ざすU-20日本代表のコーチを兼務し、大岩ジャパンと船越ジャパンの橋渡し役も担う。今までの経験を活かしつつ、新たな取り組みにチャレンジできるのは過去の体験があるからだ。 チームの立ち上げは来年6月から7月頃を予定している。迷いはない。新たな一歩を踏み出した大岩監督の表情は、どことなく手探りの様子だった3年前と比べ、明らかに余裕を感じさせた。 日本サッカー界の未来を担う若者たちと頼れるスタッフとともに、新たなチャレンジをスタートさせる歴戦の将に期待したい。 取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
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