重要でシンプルなことをストレートに、望まない妊娠は男性に責任があるということ―ガブリエル・ブレア『射精責任』永江 朗による書評
とても重要でシンプルなことがストレートに書かれている。望まない妊娠はすべて男性に責任があるということを、著者はさまざまな角度から指摘する。 男性さえちゃんと避妊をすれば、望まない妊娠は起きない。それはちょっと考えればわかる当然のこと。だけど、望まない妊娠は後を絶たない。その結果は中絶手術か、あるいは望まない出産となる。齋藤圭介による秀逸な解説によると、日本では年間12万6174件(2021年度)の中絶手術が実施されているそうだ。繰り返すが、これは男性の無責任な射精の結果だ。 妊娠にしても中絶にしても、女性の負担は大きい。肉体的な負担だけでなく、精神的なそれも。心身の苦痛や影響が長期にわたって続くこともある。望まない出産の果てに嬰児殺しや育児放棄が起きることもある。罪に問われ社会から袋だたきにされるのは女性だけだ。避妊せずに精子を放出した男性はおとがめなし。 望まない妊娠を防ぐ方法は簡単だ。男性がコンドームをつけるだけ。コンドームをいやがる男は大バカ者である。もしもぼくに子供や孫がいたら、本書とコンドームを渡したい。 [書き手] 永江 朗 フリーライター。 1958(昭和33)年、北海道生れ。法政大学文学部哲学科卒業。西武百貨店系洋書店勤務の後、『宝島』『別冊宝島』の編集に携わる。1993(平成5)年頃よりライター業に専念。「哲学からアダルトビデオまで」を標榜し、コラム、書評、インタビューなど幅広い分野で活躍中。著書に『そうだ、京都に住もう。』『「本が売れない」というけれど』『茶室がほしい。』『いい家は「細部」で決まる』(共著)などがある。 [書籍情報]『射精責任』 著者:ガブリエル・ブレア / 翻訳:村井 理子 / 出版社:太田出版 / 発売日:2023年07月21日 / ISBN:4778318781 毎日新聞 2023年9月9日掲載
永江 朗