2024年はどんなバス記事が多かったっけ? 締めくくりと来年の展望
■自動運転の勘違い?
バス運転士不足の問題を取り上げるたびに、多くの一般読者から「自動運転はよ!」との声が寄せられる。しかしバスマニアの方であれば、それがどれだけ遠くの未来の話であるのかは理解している。WEB記事は本誌と異なり不特定多数が読者であるため、仕方のないことだが自動運転で運転士不足は即解決とはならないことを、実証実験記事のたびにお伝えした。 自動運転は無人運転と同義ではないために起こる勘違いなのだが、バス運転士不足を解決するには無人運転が実現しないと難しい。現在各地で行われている自動運転の実証実験は運転士が乗車したうえで自動運転を行うか、オペレーターが乗車して運転士は無人で運転を行うかのどちらかである。 車両に人を要するのであれば、運転士であれ車掌であれ人件費は必要であり、運転士不足の解決にはならない。決して自動運転を否定しているのではなく、運転士不足解決のために自動運転の早期実施を求めるのは現状では無理があるということである。
■EV車の話題
2024年はEV車導入の事業者が多く、こちらも話題になった。路線バスやコミュニティバス程度であれば1回の充電で1日走ることは可能であり、起動と同時に最大トルクを発生させるモーターによるパワフルな発進と加速を体感した読者も多かったのではないだろうか。 EV車を導入した記事に登場する車両は、EV車で先行している中国のBYD社製のバスがほとんどだった。しかし今後はエルガEVも発表されたこともあり、国産EV車が走る姿も多くみられるだろう。従来のディーゼル車、EV車、燃料電池車やレトロフィットでEV化された中古ディーゼルバスも登場して多様な燃料のバスが走りそうだ。
■2025年は乙巳の年
2024年を振り返ってみて、やはりバス運転士不足問題は解決を見ず、状況はますます悪化している。これは数字を示さずとも、都市部、地方を問わず減便や路線の休廃止が続々と発表されていることからも明らかだろう。 コロナ騒ぎの最中にはコロナを理由に減便や休廃止に走った事業者が、今度は運転士不足を理由に路線廃止を表明し始めている。どの理由も事実だろうが、あまりにマイナス要因の発表が続くと住民の足としての事業者のイメージと信用が悪くなる一方なので、求職者が希望する待遇と乖離している運転士の仕事を根本から考え直す必要があるだろう。 国や自治体の支援は後手で当てにできない印象が強く、その間の状況悪化を放置しているようにも感じる。民間事業者に表立って補助金や支援をするのは躊躇するのかもしれないが、今の今まで「公共交通機関」の名のもとにがんじがらめにしてきた報いもあるはずだ。すでに事業者の努力ではいかんともし難い状況なのは事実なので、年収や拘束時間、休日をはじめとする様々な待遇改善をするべきだ。 取材に協力してくれる事業者があれば、2025年は採用後にどんな研修を経て一人前の運転士に育てるのか、そしてどのような待遇で迎えるのかをありのまま記事にしたい。 来る2025年は乙巳の年である。乙(きのと)は木々の意味であり伸び広がる象徴で安定のシンボルである。巳は蛇でおなじみ金運や脱皮による再生のシンボルだ。読者の皆様とバス業界が安定をつかみ、悪化した状況の再生につながるように祈念して2024年の締めくくりとしたい。