<被災地復興>若い女性の雇用模索、バッグや化粧品製造で
被災地の雇用創出を目指す動きが、バッグや化粧品など若い女性が好む分野でも出てきた。異業種から参入した企業もある。女性に魅力的な被災地での仕事は限られ、若年層の人口流出は続いている。企業側には「若者が地元で働き定住してこそ、本当の復興」との思いがある。
精密機械の隣で手編み
精密電子部品などの受注生産をしていた 「アストロ・テック」(宮城県南三陸町)は、2011年3月の震災後、畑違いのバッグ製造を始めた。ファッション業界関係者から「復興支援のバッグ製造をしたい」との要望を受けて、決意した。精密機械の隣で、革を編んでバッグを手編みする「二刀流」だ。 同社は、1ミリ以下の正確さが必要な技術力を、バッグでも生かす。予定を前倒しして、今年中には自社で一貫製造する体制を整える。2011年4月の事業再開時は8人まで減った従業員は、現在約2倍の15人に増えた。若い女性従業員が多く、「地元で働きたい」との声が増えたという。 佐藤秋夫社長は、求人に反応がなかった震災直後と比べ、手応えを感じている。「復興は、高校生など10代が中心となって働く2030年ごろまで続く。高卒の新入社員を入れて、『ファッション産業』など夢が持てる環境を整えたい」と意欲を見せる。
気仙椿でリップクリーム
岩手県陸前高田市など気仙地域のツバキで産業化を目指す、地元の事業所と支援企業による「気仙椿ドリームプロジェクト」では、つばき油入りのハンドクリームを昨年開発し、限定3000個を1カ月で売り切った。女性医師の意見を取り入れ、「品質がよく買いたいもの」を開発した。 今月15日から第二弾で発売するリップクリームでは、現地の女子高生の意見を重視した。容器デザインを3種類の候補から選んでもらい、つばき油の配合割合も聞いた。つばき油は現地で食用油として長く使われてきたが、若者には浸透しておらず、地域素材を知るきっかけにもなったという。
プロジェクトを進める都内在住の渡邉さやかさんは「まずは生産体制を固めて、その後エステやネイルなど美容の雇用に広げていければ。女子高生などとの連携を続け、プロジェクト自体を彼女らに渡す形にしたい」と構想を話した。