進む円高、ビットコイン市場に再び影響か──市場関係者の見方
日本円は米ドルに対して値上がりし、他国の法定通貨をアウトパフォームしており、市場は世界の株式とビットコイン(BTC)の急落が特徴的だった8月初旬の様相を再び呈している。 米国時間8月15日遅くから円は2.4%上昇して1ドル=145円となり、8月5日の安値141.68円からの推移を止め、「反リスク」通貨としての円への新たな見方の萌芽が現れた。リスク選好度のバロメーターである豪ドルに対しては、円は1%超の上昇。ユーロや英ポンドに対してだと、さらに勢いを見せている。 こうした外国為替市場の動きは、7月末から今月にかけて起きた円によるアウトパフォーマンスを彷彿とさせる。この間、日本円の借り入れコストが上昇する中で、比較的安価な円建てローンで賄われたキャリートレード、つまり強気のリスクオンのベットが解消される方向へと促された。 その結果、伝統市場におけるリスクエクスポージャーが低下したことで、ビットコインや暗号資産(仮想通貨)市場全体の重しとなった。ビットコインは米国時間8月5日までの8日間でおよそ7万ドル(約1020万円、1ドル=146円換算)から5万ドル(約730万円)に下落したが、その後、米ドル/円の反発とともに6万ドル(約875万円)まで回復した。
市場関係者の見方
「ストップがかかり、過度なキャリーポジションが解消され、円高は、負のフィードバックループを引き起こしている。これは世界的にリスク資産のポジションを揺るがすものだ」と、当時、有名トレーダーのサイモン・リー(Simon Ree)氏はX(旧ツイッター)で語った。 ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)の暗号資産関連トレーディング部門責任者、アンドレイ・カザンツェフ(Andrei Kazantsev)氏は最新の論評でリー氏のコメントに同調し、ビットコインとイーサリアム(ETH)が円キャリートレード解消と8月5日の世界的なVARショックに巻き込まれた経緯を説明した。VAR(バリュー・アット・リスク)とは、市場が一定期間内に被る可能性のある最大損失額である。突然の急騰により、トレーダーは比較的リスクの高い資産へのエクスポージャーを縮小せざるを得なくなる。 したがって、再び円高が進んだことは、暗号資産トレーダーの注目に値する。INGによると、米国時間8月5日までの3週間で円が1ドル161円から141.68円に上昇したことで、下落時に円が買われる雰囲気が醸成されたという。 「米ドル/円が20%も下落すれば、今後の方向性に対する期待に大きな影響が及ぶと我々は考えている。したがって、行動にも影響が出る可能性がある」とINGは米国時間8月16日の顧客向けメモで述べた。「行動の変化は、より安い水準で円を買う意欲が高まることを意味しており、リスクを円高バイアスに傾けることになるだろう」 しかし、一部の観測筋は、米国経済と9月中旬に予定されている連邦公開市場委員会(FOMC)の次回金利決定会合の影響で、今後数週間でキャリートレードの解消が再開される可能性があると指摘している。 「FFF(フェデラルファンド金利先物)は現在、9月に50ベーシスポイントの利上げが行われる可能性を50%と予測しているが、経済指標が概ね容認できる水準にあることから、FOMC会合が近づくにつれてこの確率は下がると予想している。しかし、FRBが50ベーシスポイントの利下げを実施した場合、当初は市場の反応は好意的になると思われるが、経済に対する懸念と円高によりキャリートレードが再び活発化し、売り圧力が高まる可能性がある」とイースタリーEABリスクソリューションズ(Easterly EAB Risk Solutions)のグローバルマクロストラテジスト、アーニム・ホルツァー(Arnim Holzer)氏は電子メールで述べた。 |翻訳・編集:T.Minamoto|画像:Shutterstock|原文:Attention Bitcoin Traders, the Japanese Yen Is Strengthening Again
CoinDesk Japan 編集部