石田ひかりドラマ『週末旅の極意2』夫役の甲本雅裕に勝手に親近感「私たちって同じ仕事をするきょうだいの下という共通項があるんです」
青春ファンタジー映画の傑作のひとつとしていまなおファンの多い『ふたり』で、当時若干18歳でありながらも圧倒的な存在感を放った俳優・石田ひかり。1992年秋から93年春にかけて放送されたNHK連続テレビ小説『ひらり』のヒロイン・藪沢ひらりを演じ、国民的な人気者となり、年末の紅白歌合戦では2年連続で司会を務めた。平成を代表するドラマ『あすなろ白書』(93年・フジテレビ系)をはじめ、以後も数多くのドラマ、映画、舞台などで活躍。結婚、出産を経て、近年は母親役としての活躍が多いが、今秋放映されたドラマ『全領域異常解決室』では夜を治める”神様”役が話題を集めた。10代の頃から芸能界に身を置き、様々な体験を経た石田さんのCHANGEについて聞いてみた。【第3回/全4回】 ■【画像】石田ひかり主演ドラマ『週末旅の極意2』撮影メイキング 結婚、出産を経て2006年に俳優として復帰した石田ひかりさんの最新出演ドラマは『週末旅の極意2~家族って近くにいても遠いもの~』。昨年放映され注目を集めた前作(season1)は一組の“夫婦”(観月ありさ&吉沢悠)の物語だったが、同ドラマのseason2となる今回は山岡家というどこにでもいる“家族”の物語。離れ離れになった4人家族が親子ともに“週末旅”を通して成長していく姿を描いている。 「私、旅と温泉が大好きなので、“なんて良い仕事だろう”という羨ましい気持ちでseason1を観ていたんです。毎回、夫婦の意味と人生に添いつつ旅の楽しみを描いていて“こんなに良い仕事ってあるのか”って(笑)。そうしたら今回、お声がけいただいて、“絶対やります!”って即決でお返事しました」
俳優復帰作でも夫婦役だった甲本雅裕
二人の子供が成長し、親元を離れ、少しバラバラになりかけている家族が”週末旅”を通して新たな関係性を築いていく。一家が向かう旅先は会津若松、黒部、熱海、函館、箱根……などよく知られた観光地で、そんな身近さも観る者に共感を与える一因となっている。石田さんが演じる山岡優子という母親は二人の子供を持つが、長女は就職し、長男は大学に通学、自身はパートとしてパン屋で働いていて、夫・義正との間にはどこか倦怠感が感じられる──という設定だ。 最近は「母親役が最も似合う」とネットでも評判ですが、と話を向けると石田さん自身も「そうなんですか!」と目を丸くして驚いた様子。その上で役について尋ねると 「ごくごく普通のお母さんだと思っています。でも、子供が小さい時には随分と過干渉だったところもあって、優子もそれではいけないと思っているし、親離れと子離れが絶対に必要だと思っているところは等身大のお母さんだと思いますね。私自身も娘が二人いてもう家を出ていますが、二人が日々何をしているか知りませんし、それで良いと思っています。でも、一方ではやはり淋しさも感じます。考え始めたら心配でしかないので、むしろ考えないようにしている……というのが正しいかもしれませんね。やっぱり巣立たせなければいけないとう葛藤は常にあるんです。そういう意味では共感することばかりですね」 夫・義正との”距離間“が演技のポイントとなってくる。 「すごく難しいですよね。旅が始まる前はギッスギスで会話も無いような、本当に険悪なムードなのに、徐々に仲を取り戻していく……というのが非常に判りやすいと思うんですけど、監督さんやプロデューサーさん、夫役の甲本(雅裕)さんとも“あんまりそういう風にはしたくないね”と話していて。本当に仲が悪かったら、やっぱり旅にはいかないと思うんです。旅に行ったから子供たちも含め仲良くなるというわけじゃないとも思いますし。だから、実際のお芝居でも監督さんからは“ちょっと距離間が近過ぎましたね”とか“ちょっと抑えて下さい”とか、逆に“もうちょっとテンション上げて下さい”って。そのさじ加減は甲本さんもとても大事にされていますね」 夫・義正を演じる甲本雅裕さんについて。 「甲本さんとは私の俳優復帰作の『弁護士のくず』(2006年)の一話だけのゲスト出演で夫婦役でご一緒させてもらっているんです。この時もあんまり仲のいい夫婦じゃなかったんですよ(笑)。でも、私たちって同じ仕事をするきょうだいの下という共通項があるんです。甲本さんはお兄様がミュージシャンの甲本ヒロトさん。一方的にですが、親近感を感じています」 第一話のサブタイトルが『家族の再開』であるが、“さいかい”の“かい”の字が”会う”ではなく”開く”となっているのが目を引く。 「完全に家族の関係が終わってしまったわけではないんですけど、新たな関係性を始めてみようかなっていうのが優子の気持ちだと思うんです。昔には戻れないし戻る必要もないし。でも、ちょっと疎遠になっていた。それを踏まえつつ、ここからまた始めよう……そんな意味が込められているのかなって思いましたね」 石田ひかり(いしだ・ひかり) 1972年5月25日、東京都生まれ。A型。T160。1986年、ドラマで俳優デビュー。1987年、シングル『エメラルドの砂』でアイドル歌手としてデビューを果たす。1991年に公開された主演映画『ふたり』で「第34回ブルーリボン賞」をはじめとする多くの新人賞を受賞。以降、多くの映画やドラマを中心に活躍。最近作に『九十歳。何がめでたい』、『ブルーピリオド』などの映画や『あの子の子ども』、『全領域異常解決室』などのドラマがある。公開待機作に映画『366日』(2025年1月10日公開)がある。 鈴木一俊
鈴木一俊