あの政治家にも観てほしい? 理想の引き際映画5選!
プロとしての引き際。そこで終わりではないことも教えてくれる! 『人生の特等席』
自身の監督作『グラン・トリノ』もそうだが、クリント・イーストウッドほど“引き際”をかっこよく演じられるスターはいないだろう。メジャーリーグのスカウトマンとして長年、その目利きをはたらかせてきたガスも年齢による衰えを自覚しはじめる。弱った視力を補うため、ボールがバットに当たる音でその才能を判断するなど、熟練のなせる技を持つものの、球団フロントからは解雇されかけている。プロフェッショナルとしての引き際をどう考えるかという点で、これほど胸に迫る映画も少ない。 そして今作は、引退を迷う人に対し、家族の対応をしっかり描いているところも見どころ。弁護士として多忙を極める娘が、自分の仕事を休止して父親のスカウトの旅に同行する。母親を早くに亡くし、父に育てられた娘。それゆえに父娘の関係は微妙な距離感だが、彼女は父の仕事ぶりを近くで目にしながら、改めて人生になにが大切なのかを学んでいく。ガスはこれで仕事を引退するかもしれない。それでも人生はまだ続く。引き際を迎える年齢になっても、新たに周囲の人に勇気や人生の指針を与えることができるのだと、今作は教えてくれる。
潔い見切りか、燃え尽きるまで突き進むか? その答えを教えてくれる! 『グランドフィナーレ』
様々な職種の中でも、“芸術家”ほど引き際を決めるのが難しい仕事はないだろう。肉体と精神がしっかりしていれば何歳までも続けられる。しかし同時に、才能がなくなっていく現実とも直面する。その意味で、今作の主人公である音楽家と、その親友である映画監督のドラマは切実だ。世界的指揮者のフレッドは、英国の女王から依頼された演奏会も「引退したから」とあっさり断る、頑固な性格。人生の仕事は終わったと潔く見切りをつけている。一方で映画監督のミックは、まだまだ新作への意欲を失わない。自身の引き際に対し、真逆の考えをもつ2人は、その運命を大きく分けていく。 舞台となるのは、スイスのアルプスにある高級リゾート地。老人たちや、あのマラドーナを思わせる元サッカー選手など、すでに“現役”を終えた人々が集まっている。どこか現実離れしたムードも漂うなか、皆それぞれ過去の栄光とどう折り合いをつけるか。その言動が要所で心に刺さる作りだ。フレッド役のマイケル・ケイン、ミック役のハーヴェイ・カイテルが、引き際が対照的な役を過去の映画のキャリアも重ねて演じ、胸が詰まる瞬間が何度も訪れる。