液体水素エンジンGRカローラの進化が富士24時間で見えた「水素でレースが楽しめる可能性を示せた」
トヨタは、5月24日~26日に行なわれた「ENEOS スーパー耐久シリーズ 2024 Empowered by BRIDGESTONE 第2戦 NAPAC富士SUPER TEC 24時間レース」に、液体水素を燃料として搭載した「#32 ORC ROOKIE GR Corolla H2 Concept」(以下、液体水素エンジンGRカローラ)で参戦した。レースの現場を通じて行なっている技術開発の様子を垣間見せてもらった。 液体水素エンジンGRカローラが参戦するスーパー耐久のST-Qクラスは、2021年に誕生。他のクラスに該当しないスーパー耐久機構が認めた車両が参加できるクラスで、スーパー耐久が掲げる理念に共感したメーカーが今後の未来を見据えたクルマの開発の舞台として活用してきた。つまり、自動車メーカーが新技術をレース実戦で試せる場なのである。 トヨタは2021年、2022年は高圧気体水素を燃料に使用した水素エンジンで戦い、2023年からは燃料の水素を気体から液体に変えて参戦、技術開発を続けている。 富士24時間レースの戦績は 2021年(高圧気体水素)ORC ROOKIE Corolla H2 concept 358Laps 2022年(高圧気体水素)ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept 478Laps 2023年(液体水素)ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept 358Laps 2024年(液体水素)ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept 332Laps となっている。 5月26日決勝日、レース終了の2時間ほど前に行なわれた会見(GRレーシングカンパニープレジデント高橋智也氏、車両開発部先行開発室室長三好達也氏、GRパワトレ開発部主査小川輝氏が出席)で、今回の富士24時間を総括した。
ふたつの目標はクリアできた
三次氏は 「水素カローラでふたつの目標を掲げていました。ひとつは航続距離の延長です。1年前(2023年)の富士24時間では1給水素あたり16周、最終戦(2023年11月)の富士で20周まで増えてきました。今回、楕円形の異形水素タンクの採用などにより目標の30周を超え、現在のところ31周を達成しています」と説明した。 1給水素あたりの航続距離31周について、高橋プレジデントは 「僕らが一番ポイントだと思っているのが、1スティント1回給水素してから次に帰ってくるまで、30ラップ、31ラップ走れたこと。これはいまガソリンで走っているクルマと遜色ないところまで来ていると正直思います。そこが大きなポイントで、水素を使ってもこういうモータースポーツフィールドでガソリンと同じような楽しみ方ができる可能性を示せたのかな、というのが僕の受け止めです」と語った。