「楽して稼げる」「地球にやさしい」太陽光発電が家族を壊す…持続可能なクリーンエネルギーの"とんでもない闇"
■再生可能エネルギーの導入が電力価格の高騰を引き起こしている まずは電気料金の高騰だ。天候に依存する再生可能エネルギーは電力供給が不安定である。その上、風力・太陽発電施設やインフラ整備にかかる初期投資コストが高い。電力供給の不安定性と初期費用が電気料金の上昇に直結している。ほかにもさまざまな理由はあるが、電力価格の高騰の背景に再生可能エネルギーがあることは否めない。さらに、こうした経済的影響に加えて、急速な政策推進は政治的対立も招いている。 ■欧米でリベラル政党が不人気に… 例えば、フランスのマクロン大統領やカナダのトルドー首相の支持率低下、そしてカマラ・ハリス氏の大統領選敗退と、欧米の国々では最近リベラル政党が支持を失っているが、ここにもクリーンエネルギー政策が絡んでいる。 もちろん、エネルギー価格の上昇だけが、リベラル政党の支持率低下の原因ではない。再生可能エネルギー政策は「都市部エリートの価値観の押し付け」と受け取られることが多い。都市に住むリベラルなエリート層にとっては環境問題が最優先事項だろうが、一般の国民にとって電気代などを含む物価の値上がりは死活問題だ。そういうわけで、クリーンエネルギーへの急速な傾倒が政治的な分断を生んでいる。 このような背景を踏まえ、映画が描き出した家族や地域の分断を見てみよう。 ■家族とコミュニティを崩壊させる政策を“持続可能”と呼べるのか 本作では、ソーラーパネルを自分の土地に導入すると助成金が出ることを知った桃園の所有者が、桃農園を営む一家に桃園を伐採してソーラーパネルの管理をするか、桃園を立ち去るかの決断を迫り、一家は分裂していく。 儲からない農業を辞めてソーラーパネルを管理したい人、土地を売って都市部に移住したい人がいる一方で、伝統的な農業を続けて家族を守りたい人もおり、同じ家族のなかで意見は分かれる。楽して稼ぎたい派と桃づくりを地道に続けたい派の対立だ。筆者のインタビューにシモン監督はこう語る。 「結局は、多くの小規模農家が土地を手放さざるを得ない。それが現実です。政府や地方自治体との契約によってソーラーパネル導入が決定されるため、住民が反対の声を上げるのは難しい」 政府が推し進める“持続可能な環境政策”が、実は家族や共同体にとっては、“持続可能ではない”という皮肉な結果をもらすのだ。 さらに、この問題は農地の喪失や景観・自然破壊へと広がっている。