<リベリア・内戦の子供達>モモ ── 高橋邦典フォト・ジャーナル
少年兵との出会い
司令官が出撃の合図をだすと、政府側の民兵たちが次々と銃を構えて橋を渡りだした。ヒュン、ヒュンと、風を切る音をたてながら、機関銃の弾が頭上をかすめていく。そんな混沌のなか、だぶだぶの迷彩色のジャケットを身にまとい、銃を振りかざしながら一人の少年が歩いてきた。強がっているのか、他の兵たちのように身を伏せるでもなく、背筋をピンとのばしたままこちらに向かってくる。僕はカメラを構えて、彼に焦点をあわせた。その時だった。 「写真をとるな!」 ファインダーに映ったこの少年が、撃つぞといわんばかりのえらい剣幕でどなりだした。「少年兵」の存在は国際社会から非難を浴びていたから、彼も自分が戦っている写真を撮られるのを嫌がったのだろう。僕は素早く一枚だけシャッターをきって、顔から離したカメラを頭上に持ち上げた。 これが13歳の少年兵、モモとの出会いだった。
重い過去
内戦が終わって再会したモモは、工事現場での人夫作業やどぶさらいの仕事まで、一日数百円にしかならない日雇い仕事をしながら食いつないでいた。仕事にあぶれた日は、元兵士たちの仲間と何をするでもなく街をぶらつく。タバコとマリワナの煙がたちこめる、海沿いの掘建小屋のなかでビールをラッパ飲みする彼の姿は、どこかなげやりにみえた。 1999年、反政府兵たちが決起し、内戦が始まった。リベリア北部のロファ州の農家に7番目の男子として生を受けたモモは、政府側の民兵だった気の荒い兄のサーに、こづかれながら無理やり部隊にいれられた。その後内戦終結までの4年にわたって、モモはただ戦いに明け暮れるようになったのだ。
「捕まえた敵を二人殺したことがある…」 ある日モモは僕に、こんなことを言った。 「司令官の命令だったんだ。捕虜の身体に向かってひたすらにマシンガンを撃ち続けた。弾倉が空になるまで撃ち終わって、身体の力が抜けてしまったよ。 そのあと司令官が酒をくれたんだ。それで気分は持ち直した」 人を殺したことを悔やむ様子もなく、逆に自慢げにふるまうわけでもない。モモはぼくと眼を合わせず、暑さとひどい湿気から、うつむいたその額からは玉のような汗が噴き出していた。