能登半島地震「5カ月断水」復旧を困難にした最大の理由とは 被災地だけではない水リスク
能登半島地震では、多くの水道管が破損し、約5カ月にわたって断水が起きた。長期化した背景には何があるのか。取材から日本の水道インフラが抱える課題が見えてきた。AERA 2024年12月23日号より。 【イラスト】緊急点検の結果、上下水道の耐震化整備にばらつきが発覚 * * * 1月1日に発生した能登半島地震から、まもなく1年になる。 「長期にわたる断水は、人々から当たり前の暮らしを奪っていった」 そう振り返るのは、石川県珠洲市で銭湯「海浜あみだ湯」を運営する新谷(しんや)健太さん(33)だ。地震の影響で地域全域に断水が広がる中、あみだ湯は、地下水をくみ上げる配管設備を修復し、ボイラーを廃材で沸かして1月19日の時点でいち早く営業を再開していた。当初は市内の住民たちに無料で開放。 「地域住民は全員が入浴したと思う」 ただし、新谷さんは銭湯の復旧を急ぐ一方で、住民の二次避難の支援も進めていた。断水がいつまでたっても解消されず、料理も洗濯もトイレも、何もかもがままならない生活を強いられていたからだ。結局のところ、市内の上下水道の復旧までに5カ月を要した。 「水の問題は命に直結します。僕が最も恐れていたのは、災害関連死です。お年寄りなどは、あの生活を長く続けられません」(新谷さん) 今回の能登半島地震における水道インフラの被害は、過去の大震災と比較しても極めて甚大だ。 国土交通省が9月末に公表した「上下水道地震対策検討委員会最終とりまとめ」によれば、新潟、富山、石川、福井、長野、岐阜の6県で最大約14万戸の断水被害が発生。特に被害の大きかった珠洲市や輪島市では、約5カ月という長期にわたって生活用水の確保が困難な状況が続いた。配水管1キロメートルあたりの被害箇所数は、阪神・淡路大震災の約9倍にも達している。 ■水道を支える重要な管路も耐震化が未実施だった なぜ今回は、復旧にこれほどの時間がかかったのか? まず、復旧を困難にした最大の理由は、耐震化の不備による水道インフラの脆弱(ぜいじゃく)性だ。それは能登に限らず、地方の人口縮小地域に共通する全国的な問題でもある。 能登半島地震では、山の斜面や道路崩壊といった土砂災害が発生し、上流の浄水場から配水池を結ぶ管路までも被害を受けた。「最終とりまとめ」によれば、特に、浄水場や配水池、下水処理場に直結する「基幹管路」(水源から源水を浄水場へ送る導水管や配水管のように、水道を支える重要な管路のこと)などの耐震化が未実施であったことなどにより、広範囲で断水や下水道管内の滞水が発生したという。