能登半島地震「5カ月断水」復旧を困難にした最大の理由とは 被災地だけではない水リスク
災害発生後、輪島市で復旧支援に当たった、東京都水道局の吉冨信浩さん(総務部水道危機管理専門課長)は、こう証言する。 「現場で見て、『送水管』や『配水管』に被害が広範囲に及んでいた。これらは水道インフラの上流の施設で、山の中にある。復旧作業は、上流から水を流して、順々に下流に向かって漏水箇所を特定していく。上流の基幹施設がダメージを受けていれば、下流の地域全体が断水になってしまうわけです」 さらに、能登特有の交通アクセスの不便さによる作業時間の制約もあった。 「当時、私たちが作業にあたった輪島市に宿泊拠点がなく、2月中旬まで職員たちは朝5時頃に金沢市を出発し、片道4~5時間かけて現場に通った。実質的な作業時間は1日5~6時間。その限られた時間の中で、聴診器のような漏水探知機を使って一区間ずつ確認していく地道な作業が続いていました」(吉冨さん) 今回の被害実態を受けて、国交省は7月から10月にかけて、全国の約3800の水道事業者と約1500の下水道管理者を対象に、初の包括的な調査を実施。その結果、避難所や拠点病院などの重要施設につながる水道管の耐震化率は上水道が約39%、下水道が約51%。しかし、両方の耐震化が済んでいる施設は、約15%にとどまっている。 ■住民は水利用の長期制限で二次避難を余儀なくされ 調査を担当した国交省石井宏幸大臣官房参事官は、結果について次のように分析する。 「(重要施設につながる)水道管の耐震化が上下水道ともに整備されている比率が『15%』という低い数値は、日本の課題を表しています。現在は上下水道ともに国交省の管轄ですが、この3月までは、上水道については厚生労働省の管轄でした。上下水道の耐震化の整備が済んでいる比率にばらつきがあるのは、各インフラがそれぞれ別々の管轄で整備されてきた経緯もあるでしょう。災害時には、これらは切っても切り離せない関係にあり、上水道が機能していても下水管が破損すれば使用できず、逆に下水管が健全でも、各家庭に水道水を供給する給水管が破損していれば機能しません」 避難所での水利用には、上下水道の耐震化による給排水機能の確保が必須だ。能登半島地震では、水利用の長期制限が住民の二次避難を余儀なくさせた。調査結果は、上下水道の両機能がそろわなければ避難所での生活が成り立たないことをデータで裏付けた形だ。(ジャーナリスト・古川雅子) ※AERA 2024年12月23日号より抜粋
古川雅子