結末はどうなる? “修羅場”から一転、草太の成長に心が震えたワケ。 NHKドラマ『かぞかぞ』第9話考察レビュー
河合優実主演のドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』が地上波にて放送中。岸田奈美のエッセイを元にした本作は、2023年にNHKBSプレミアム・ NHKBS4Kで放送され大反響を呼んだ。今回は、第9話のレビューをお届け。(文・ 明日菜子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】河合優実に圧倒される…本格的な映像美を堪能できる劇中写真はこちら。ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』劇中カット一覧
“面倒くささ”が爆発した第9話
「家族って、面倒くさくて、愛おしい。」 ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK総合)を語るにあたり、何度も繰り返されてきたフレーズであり、岸本家の物語を通しては何度も感じてきたことだ。 しかし、いざ自分の家族について考えたとき、その“面倒くささ”をちゃんと認識できているのか。生まれたときから半ば強制的に決まっていた関係を、できるだけ長く無理なく継続するために、あえて気づかないふりをしたことはないだろうか。 最終回直前の『かぞかぞ』第9話はその面倒くささが一気に爆発する。誰も悪くない。だからこそ、複雑で、むずかしい。 舞台は2025年に移る。母・ひとみ(坂井真紀)が大動脈解離で倒れてから約10年、いまでは電動車椅子を乗りこなし、どこにでも行けるようになっていた。認知症専門のケアハウスに入居した祖母・芳子(美保純)とは、同居を解消したものの、以前よりも良好な関係だという。 七実(河合優実)の作家生活も順調で、最新作『岸本家のあかん日々』は大ヒット。地元で開催したサイン会で、高校時代に付き合っていた小平くん(島村龍乃介)と久しぶりの再会を果たす。他にも、二階堂(古舘寛治)が七実の同級生・茉莉花(若柳琴子)と結婚していたりと、それぞれの物語はゆっくりと進んでいる。
イマジナリー父・耕助(錦戸亮)との別れのシーンに注目
なかでも時間の経過を感じたのは、弟の草太(吉田葵)が一人暮らしを夢見るようになっていたことだろう。だが、草太と二人暮らしのひとみは複雑な想いを抱えていた。 「ずっと草太と二人でおるつもり?」「当たり前やん。“家族”なんやから」「一緒に住んでへんけど“家族”やんねえ?」と母の違和感に気付いた七実がちょっと探りを入れた通り、ひとみにとって、草太は生まれた時から“特別”だった。根底にはやはり「健康な身体で産んであげられなかった」負い目があり、同時に「障がい者の息子を親が守らなければいけない」という強い義務感が芽生えたのだろう。その想いは耕助(錦戸亮)が亡くなったことでさらに強まった。 普段は朗かであるひとみが草太への執着を露わにしたシーンには、まさに“修羅場”を感じさせたが、草太の巣立ちを描いたシーンは一転して爽やかだ。今作では「グループホームへの体験入所」と「イマジナリー父・耕助(錦戸亮)との別れ」を通して、草太が身体的にも精神的にも家族から自立していく過程を鮮やかに描いている。 草太の胸中を映したような、亡き父との二人だけの場面。父と息子は「この道であっているか」「あっている」「間違っていないか」「間違っていない」を繰り返し、草太の「パパ、いままでありがとう」を合図に、耕助の幻はフレームアウトする。もし父の幻がパッと消滅していたら、草太が父の存在を消し去ってしまったように感じたかもしれない…。 しかし、耕助の幻がグッと画面から退場したことで、草太が父との思い出を大切にしながらも、自分の力だけで歩もうと決めた覚悟が伝わった。