相続税・贈与税の日米租税条約の存在のありがたさ、租税条約の「ある」「なし」で税額に大きな差
ほかの国との条約締結が急務
日本の居住者が米国に不動産を所有する場合の相続では、米国では非居住者の扱いとして課税が行われます。その場合、6万ドルの基礎控除額であれば、納付額が生じることもあります。しかし、日米間のように相続税租税条約が締結されている場合、内国歳入法典第2,102条の適用を受けることから、米国の統合税額控除の金額が大きなことから、米国で課税を免れる可能性があります。 この場合の手続きでは、非居住者の相続税申告書であるForm706NAに、租税条約の適用による控除を受けることを示すForm8,833を一枚の添付で済みます。すなわち、「全世界資産××ドルで、そのうち米国の資産が××ドルなので、日米相続租税条約4条適用の結果、米国での控除額を××ドルとする」と記載することになります。 なお、日米相続税租税条約の適用を受けて、米国における遺産税の課税を免れたことになる場合、「租税条約に関連したことによる報告義務」が生じます。米国の財務省規則§ 301.6114-1 (Treaty-based return positions)にこれに関連した規定があります。 冒頭で触れましたが、米国以外とは相続税・贈与税に関する租税条約を締結していません。当該国に住所がない場合は二重課税になるリスクが生じており、当該国でどのような課税状況であるのかをチェックする必要があるでしょう。 矢内一好 国際課税研究所首席研究員
矢内 一好