思春期の子どもを深く傷つける「親の不用意な一言」
こんな親子のすれちがいが子どもを傷つける
中学2年生の女の子から聞いた話です。彼女は運動神経が抜群によく、部活は陸上部に所属していました。短距離走が専門で、地区大会で1位になり、県大会に出場できることになったということでした。そのことを、彼女はうれしそうに報告してくれました。 私が「それはすごいねえ。お母さんも大喜びでしょう」といったら、彼女から急に笑顔が消え、うつむいてしまいました。 「どうしたの?」と聞くと、吐き捨てるように「お母さん、一度も大会に来たことない。あたしのことなんかどうだっていいんだ」といいます。よく話をきいてみると、どうやらお母さんは教育熱心な方で、運動よりももっと勉強を熱心にしてほしいと思っているようでした。 「部活の話をしても、ぜんぜん興味なさそうだし。ていうか聞いてくれないし。家に帰ると勉強のことしかいわなくて、まじウザイ」 彼女はお母さんに部活の話を聞いてもらいたかったのです。大会に来て、応援してもらいたかったのです。そして、1位になったことをいっしょに喜んでほしかったのです。だけどそれがかなわなかった。お母さんは勉強してほしい、勉強ができる子どもになってほしいと願っている。 子どもは勉強よりも今は運動に夢中で、自分が夢中になっているものを親にも理解してもらいたい、認めてもらいたいと思っているのに、受け入れてもらえなかった。彼女は本当にさみしかったと思います。とても悲しかったことでしょう。「私はお母さんに愛されていないんだ」そう思ってしまったかもしれません。 親にしてみれば、子どもの将来を思って勉強しなさいといっているのですが、それはたぶんに親の自己愛です。子どもの気持ちをまったく無視しています。子どもが何を求めているか、親にどうしてほしいと思っているかに思いを寄せることができていません。 こういうことを、魂の虐待というのです。子どもがしてほしいと思っていることは何か。何が子どもへの愛になるのかを見つめながら、子どもと接することが大切です。そして、望んでいることを十分に満たしてあげてください。 【まとめ】子どもが望んでいることを認めてあげなかったら、子どもは「お父さんお母さんは自分のことがきらいなんだ」と自分を否定してしまいます。
佐々木正美