「sakamotocommon GINZA」に見る、坂本龍一が遺したものの可能性
坂本龍一 が遺したものを共有化し、未来のクリエイターのために利活用することを目指す「sakamotocommon(サカモトコモン)」が、初号プログラム「sakamotocommon GINZA」がGinza Sony Parkと共同でスタートさせた。会期は12月25日まで。 sakamotocommonは、「坂本龍一が遺したものを利活用し、新しいクリエイションを生み出すこと」「坂本龍一が遺したものとクリエイターの接点をつくること」、そして「坂本龍一が遺したものと人々が触れることのできる場をつくること」の3つを趣旨としており、本展はまさにその趣旨を体現するものだ。 地下鉄から直結する地下2階では、坂本龍一+真鍋大度によるコラボレーション作品《Sensing Streams 2024 - invisible inaudible (GINZA version)》(2024)が存在感を放つ。 「札幌国際芸術祭」(2014)での発表以来、ソウル、アムステルダム、サンパウロ、香港、北京、成都など世界中の様々な都市で展開されてきた同作は、⼈間がふだん知覚することのできない「電磁波」をセンシングし、5つのパターンで可視・可聴化するもの。現代において必要不可欠なインフラでありながらふだん気づくことのない電磁波の流れを多様なかたちで顕在化させる作品だ。 本展では、銀座を⾏き交う様々な電磁波をセンシングし、ソニーの高画質LEDディスプレイ「Crystal LED」を使った新たなバージョンで見せるかたちとなっている。 音も完全に新しいバージョンとなった本作。真鍋は「メディア・アートは技術の進歩によってできることも増えていく」としつつ、坂本とのコラボ作品をアップデートさせることについてこう語る。「この作品も、発表から10年経っており、使えるソフトや鳴らせる音も変わってきた。坂本さんはつねに新しい視点を取り込むことをしていた人であり、生前、本作をアップデートしたいと話していた。それを少しずつ反映できれば」。
文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)