これはあなたの体でも起きている!『はたらく細胞』たちの壮絶バトル。 永野芽郁(赤血球)と佐藤健(白血球)がW主演 ──【おとなの映画ガイド】
アニメにもなった累計発行部数1000万部超の大ヒットコミックを実写映画化した『はたらく細胞』が12月13日(金)、全国公開される。人間の体内を舞台に、細胞の活躍をさまざまなキャラに擬人化して描く、という前代未聞というか、これまでにない発想。赤血球の永野芽郁と白血球(好中球)の佐藤健、このふたりを主役に、豪華スターと総勢7500人のエキストラを動員し、『翔んで埼玉』の武内英樹監督がド派手に映像化した。これは、どの世代にとっても他人ごとではない、あなたの体でもおきているかもしれないミクロの戦いを描いている映画なのだ。 【全ての画像】『はたらく細胞』の予告編+場面写真(10枚)
『はたらく細胞』
俳優の新納慎也は「『化膿レンサ球菌の役をお願いします』と言われる日が来るなんて、人生何が起こるかわかりませんね」とコメントしている。片岡愛之助は「まさかの『毒性の強い菌』役。想像もつかないお役でした」と答えている。このおふたり、本作では、いわばヴィラン役。とんでもなくポップな悪役風メイクで登場する。 主演の永野芽郁も、「マネージャーさんから『赤血球役の話がきていて……』と言われたときはどういうことか全然理解できませんでした」という。たいていコメントには(笑)がついていて、役者さんたちの、最初はとまどい、そこから“面白がり”に変わっていった様子が伝わってくる。 本作には、その“面白がり”がどんどんエスカレートしたスタッフ・キャストの、いいノリが感じられる。しかも、お金をかけてていねいに、大真面目に取り組んだ「荒唐無稽」な映画だ。最も身近でありながらよく知らない人体のミクロの世界を超個性的なキャラクターに擬人化した原作も、それを実写で映像化しちゃう手腕にも驚く。 原作は清水茜の同名コミック。初出誌は少年漫画誌だが、アニメ化もされ、累計1,000万部を超える大ヒットとなった作品だ。海外でも評判で、2017年にはフランスの新聞「ル・モンド」の「この夏推薦する図書リスト」に選出されたこともある。 コミックでは、細胞の宿主となる人間そのものは姿をみせないが、実写映画にあたって、父・茂(阿部サダヲ)と娘・日胡(芦田愛菜)を登場させ、ふたりの人間世界と体内世界を同時進行で動かす趣向にしている。 体内にいるキャラクターの役名は、実際に存在する細胞や細菌の名前だ。 私たちの体を必死で守ってくれるのは、赤血球(永野芽郁)、白血球の好中球(佐藤健)のほかに、リンパ球の一種であるキラーT細胞(山本耕史)、異物を見つけると速攻で撃退してくれるNK細胞(仲里依紗)、免疫細胞のひとつで、裏の顔も持つマクロファージ(松本若菜)、司令塔のような役割をするヘルパーT細胞(染谷将太)、そしてかわいい血小板たち(マイカピュ、泉谷星奈)。 ヴィランは、化膿レンサ球菌(新納慎也)、肺炎球菌(片岡愛之助)だけでなく、毒性が高い美魔女の黄色ブドウ球菌(小沢真珠)もインパクト大。 善悪入り乱れて、日々なにかと戦っているのだが、事態は、いわゆるラスボス(SEKAI NO OWARIのFukase)の登場で急変する……。 なにしろ、体内には細胞が37兆個もあるらしい。それを映像化するわけだから、メインのキャラクター以外の細胞たちも、いつも画面に大挙してでてくる。全国21都市・31箇所で総勢7500人のエキストラが参加して撮影されたという。 バトルシーンは、こころなしか仮面ライダー風。『るろうに剣心』シリーズのスタントコーディネーター大内貴仁がアクション監督を担当。カンフーファイトや、壁走り、特大ジャンプ、ワイヤーを使ったアクロバティックなアクションが繰り広げられる。さらに、日本を代表する特殊効果チーム「白組」によるVFXで、くしゃみとか、すり傷とか、ふだんおきるちょっとした体調変化も大スペクタクルのように映像化される。 体内が舞台になった映画ではハリウッド大作『ミクロの決死圏』があったり、細胞の擬人化でいえば、ウディ・アレンが「精子」に扮した『ウディ・アレンの誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいSEXのすべてについて教えましょう』という珍品もある。染谷将太が演じるヘルパーT細胞は、頭のなかを擬人化したアニメ『インサイド・ヘッド』のイメージにも通じる。映画ファンにとってはそんな連想も楽しめるけれど、やはり、これだけの豪華キャストが真面目にハチャメチャなことをやっていて、知識まで得ることができる、って作品は唯一無二な気がする。 しかも全世代OKの映画。例えば世のお父さんたちにとっては、阿部サダヲ演じる茂の体内の描写をみて、身につまされる人も多いのでは? 茂は、ジャンクフード、酒、たばこ大好きの不摂生オヤジ。体内もけっこうたそがれている感じ。大活躍するのは、深田恭子の肝細胞だし、板垣李光人と加藤諒の赤血球も「肛門」あたりでガンバってくれる。そんなブラック企業のような職場環境で「はたらく細胞」たちをみていると、きっと、自分の体内の細胞たちに、感謝とねぎらいのことばをかけたくなるにちがいありません。 文=坂口英明(ぴあ編集部)