夏の福島で輝いた才能たち。ユース取材ライター陣が選出する「インターハイ11傑」vol.1
令和6年度全国高校総体(インターハイ)男子サッカー競技は7月27日から8月3日まで福島県で熱戦が繰り広げられ、昌平高(埼玉)の初優勝で幕を閉じました。ゲキサカでは「インターハイ11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター陣にインターハイで活躍の光った11選手を紹介してもらいます。第1回は“ユース教授”ことサッカージャーナリストの安藤隆人記者による11人です。 【写真】C・ロナウドの超高級ヨット&美女パートナーとの水着2ショット 安藤記者「共に勝利をすれば初優勝となるフレッシュな顔ぶれとなったインターハイ決勝。玉田圭司監督が率いる昌平が神村学園を3-2で下し、初の全国制覇を成し遂げた。福島で固定開催の初年度となった今大会にはきらりと光るタレントたちがたくさんいた。ここでは成績にかかわらず大きなポテンシャルを感じた選手を11人選び、インターハイ選抜として一度見ていたい布陣を組んでみました。フォーメーションは今大会多くのチームが採用していた【3-4-2-1】で選びました」 宮崎 安野 名和田 南 野田 大谷 鈴木 小椋 小倉 熊野 佐々木 以下、安藤記者が選ぶインターハイ11傑 GK佐々木智太郎(昌平高3年) 今大会は決して調子がいいとは言えなかったが、神村学園との決勝では神がかったスーパープレーを連発した。ミドルシュート、至近距離からのシュートに対する反応とセービング、浮き球のシュートへの反応とトスティングのうまさ、そしてハイボール処理などどれを取っても質が高かった。まだまだプレーの波はあるが、189cmのサイズと手足の長さ、そして俊敏性は大きな武器で、将来性も大いにあるだけに、未完成が故のここからの成長を期待したい選手。 DF小椋翔太(作陽学園高3年) 184cmのサイズとフィジカルを持ち合わせた屈強かつクレバーなCB。対人やフィードに強い選手だったが、この大会ではドリブラーに対する応対の質の高さが光った。桐光学園との試合ではドリブラーのMF吉田晃大などに対し、スピードや切り返しにもしっかりと対応。ステップワークや上半身の使い方が格段に上手くなった印象を受けた。 DF小倉煌平(矢板中央高3年) フィジカルとバネを生かした空中戦の強さと対人の強さ、ボールを奪う力はもちろん、彼の武器は奪ったボールを前に運べるところにある。ここでは3バックの真ん中で強度を発揮しながらも、彼の運ぶ力を生かしたいからこそ、ボランチにCBも高いレベルでこなせる神村学園の鈴木悠仁を選出した。 DF熊野俊典(米子北高1年) 小学校の時に見た選手権で米子北に憧れ続け、自ら売り込んで夢を実現させた彼は、1年生ながら守備の要として今大会安定したプレーを見せた。ボールを奪う力やカバーリングセンスは抜群で、ここからフィジカルがもっとついていけばかなり面白い存在になる。ポテンシャルの高さも含めて1年生ながら選出させてもらった。 MF大谷湊斗(昌平高3年) 頭脳明晰、技術抜群。彼のような選手がピッチにいたら安心できるほど、波がなく、かつハイアベレージなプレーを見せる。チャンスになるスペースや味方が困っているときに助けるスペースを見つけ出しては、状況に応じたオフの動きを入れて、そのポイントに入り込んでボールを受ける。中盤でリズムやタメを作るだけではなく、パスと見せかけてドリブル突破を仕掛けて、ラストパスを出したり、強烈なミドルシュートを放ったりするなど、攻撃面でトドメを刺すことが出来る。準決勝の帝京長岡戦での強烈なミドルシュート2発は圧巻だった。 MF鈴木悠仁(神村学園高3年) 183cmのサイズとガッチリとした上半身を持ち、豊富な運動量で最終ラインから中盤まで駆け回るハードワーカー。ボールを奪うセンスがあり、激しく寄せてボールを奪うこともあれば、一度相手に飛び込ませてからインターセプトを狙うなど駆け引きもうまい。CBもこなす彼をここに置くことで、前述したように後ろの小倉の攻撃参加を引き出せる。彼らの縦の連携は一度見てみたい。 MF野田裕人(静岡学園高3年) 昨年から高い足元の技術と的確な状況判断能力、そして激しいアップダウン能力を駆使し、右サイドバックから右サイドハーフをこなす右サイドのスペシャリストだったが、昨年度の選手権後に負傷離脱し、そこから長くピッチを離れた。その間、サッカーを多く見て、体幹などのフィジカルを鍛え直した結果、インターハイでは出場機会は限られていたが、右サイドバックとして出た試合では的確なポジショニングとボールを受けてからのテンポ良いパス出しでビルドアップの中枢を担った。守備面でも1対1の駆け引きとスピードを披露し、高校世代トップクラスのサイドバックであることを実証した。ここでは右ウィングバックに起用したい。 MF南創太(日章学園高3年) 日章学園では右ウィング、右サイドハーフ、右ウィングバックと右サイドで起用されているが、左利きで今大会は「縦へ突破をより意識した」と口にするようにカットインから左足シュートやクロスばかりではなく、爆発的なスピードで縦に仕掛けてからトップスピードのまま右足クロスを上げたり、中を見せてから急な切り返しで縦に仕掛けたりと右足を使う機会が増えた。それを見て左サイドに置いても、カットインから右足シュートやクロスも繰り出せるし、何より今年に入って磨いた縦突破からの左足クロスも大きな武器になると感じて左ウィングバックに起用をした。 FW名和田我空(神村学園高3年) FW高岡伶颯(日章学園)と共にこの世代の顔と言える彼は、今大会で出色のプレーを披露し続けた。ボールを受けたら変幻自在のドリブルを仕掛け、ボールがない時は常にチャンスとなるスペースを狙い続けて、相手の意識がボールに行っている瞬間を見逃さずに静かにその位置に入り込んで、ボールが来た時にはすでに相手を一枚交わしている状態でゴールに迫っていく。インテリジェンス、テクニック、スピード、メンタリティーどれを取ってもハイレベルで、個人としても9ゴールで大会得点王に輝いた。 FW安野匠(帝京長岡高3年) 抜群のボディーバランスを駆使し、瞬間的なアジリティーと細かいボールタッチ、そしてシャープなスイングからのシュートとゴール前で強烈な存在感を放っている。最前列でポストプレーをしながら裏抜けも出来るし、1.5列目でボールを受けてパスとドリブルでペナルティーエリア内にも侵入できる。引き出しの多いアタッカーだからこそ、同じく引き出しの多い名和田とのインサイドハーフのコンビはお互いの力を引き出しあってくれるはずだ。 FW吉崎太珠(日章学園高1年) 今大会最大の発見と言っていいだろう。高岡伶颯と水田祥太朗の2トップが揃って負傷離脱したことで、抜擢をされた1年生ストライカーは今大会で大車輪の活躍を見せた。初戦の鵬学園戦でチームを救う2ゴールをマークすると、2回戦の鹿島学園戦でも1ゴールをマーク。彼の魅力はポストプレーとポジション取りのうまさにある。DFを背負ったり、半身になってDFをピン留めしながらボールを受けたりと、ポストプレーにもバリエーションがあり、クロスに合わせる力も非常に高い。ヘッド、ボレー、ワンタッチシュートなど、ゴール前で1年生とは思えない落ち着きを見せる。勝気な性格もストライカー向きで、これからの成長が楽しみな選手。1トップとして1.5列目以降のタレントたちの力を引き出してもらいたい。