ワークマン「8800円ランドセル」に込められた狙い 高額化で過熱する「ラン活」市場に一石を投じる
ランドセルは時に身体保護の役割も担う。例えば低学年の児童が、何かの際に後ろ向きに倒れても、背負ったランドセルが護ってくれたりもするのだ。メーカーが搭載する反射材も交通安全に対する配慮だろう。 平均価格が上昇しているのは事実だが、現在は少子化の影響で、子ども用の消費財は「6ポケット(財布が6つある)」とも聞く。父親・母親と双方の祖父・祖母という意味だ。祖父母が孫に贈る場合だけでなく、みんなで資金を出して買う場合もあるだろう。
一方で、ひとり親で子育てをする家庭など、ランドセル価格の上昇に苦慮する世帯もあると聞く。その対応策として「ランドセルの再活用」に乗り出す自治体も出てきた。筆者も各家庭から使わなくなったランドセルを集めて、申し込みのあった家庭に使ってもらう事例(鳥取県の例)を紹介したこともある。 ワークマンのランドセルを開発した林マネージャーは、8800円という価格設定について、「親の立場からすると、子どもの雑な使い方に心を痛めないでいられる」と話す。また、「子どもが求めるランドセルのデザインは入学時と高学年進級時では変わってくる」ことも指摘した。
小学生でも高学年になると自我が芽生え、日常使う商品に対しても自分の意見が出てくる。人によっては、低学年から使い続けるランドセルが子どもっぽく思えたりする。 ■購入者の意見を聞いて、継続を判断 「今回の商品は買い替え需要も意識しました。かわいらしいデザインでなく、少し大人っぽいデザインにしたのもそのためです。黒のバッグは高学年男子にはささると思います」(松重氏) また、現在は塾通いや習い事をしている小学生も多い。塾などが指定するバッグで通うケースも多いが、自由に選べる場合はこうしたバッグも選択肢になりそうだ。
それまでの作業服メーカーのイメージを脱し、近年は「ワークマンプラス」や「ワークマン女子」など積極的に業態開発や商品開発を進めてきたワークマンだが、ランドセルの今後に関しては慎重に話す。 「ご購入された方に実際に使っていただき、これからお客さまの声を集めながら商品分野の継続を考えていきます」(同) 小学校入学時に必要となるのは他にもある。学習机を購入する家庭も多く、その価格も安くはない。ランドセルに関しても、消費者がそれぞれの思いでどう判断するかだろう。
高井 尚之 :経済ジャーナリスト、経営コンサルタント