洋樽仕込みの日本酒発売 「開運」の掛川・土井酒造場 氷温熟成、特有の風味
日本酒銘柄「開運」で知られる土井酒造場(掛川市)が開発を進めていた洋樽(ようだる)熟成の日本酒が完成した。ウイスキー造りなどで使われるミズナラと桜、栗の3種類の新樽で貯蔵し、純米吟醸酒に樽特有の風味を加えた。18日に出荷を開始する。酒造場の直売所でも取り扱う。 2022年の創業150年を機に樽貯蔵を始めた。日本酒本来の味と香りを生かすため、氷温庫で貯蔵して熟成のスピードを調整した。ミズナラ樽は香木の白檀(びゃくだん)や伽羅(きゃら)を想起させる香り。桜樽は爽やかな甘さ、栗樽はウッディな樽香が印象的な酒に仕上がった。 同社によると、熟成期間中に樽の酒が蒸発して目減りする通称「天使の分け前」が想定以上に多く、熟成の進行に伴う味と香りの変化の確認にも苦心した。慎重な見極めで初回は2年を要したが、今後は毎年の出荷が可能になる見込み。 伝統的酒造りが国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録される見通しになり、業界への追い風が期待されている。土井弥市社長(51)は「頑張りがいのあるタイミング。海外営業での認知度も上がる」と話した。 氷温庫の新設や国産材を使った樽の調達などを含む設備投資費は約1億2千万円。開運を英訳した「ニュー・フォーチュン」を商品名に掲げて国内外で販売する。既にスペインなど海外の顧客からも問い合わせがあるという。国内価格は720ミリリットルのボトル1本5478円(税込み)。各樽限定300本。
静岡新聞社