玉鷲、不惑の押し「成長を見せたい」 昭和以降6人目の40代幕内
大相撲九州場所7日目は16日、福岡国際センターで行われ、新大関大の里は宇良を力強く押し出し、連敗を免れて5勝目を挙げた。豊昇龍は阿炎に引き落とされて初黒星。琴桜は熱海富士を上手投げで退けて1敗を守った。 この日、40歳の誕生日を迎えた平幕の玉鷲は押し倒しで翠富士を破り、白星で飾った。 ◇ 論語に「四十にして惑わず」とあるように、角界の鉄人も心が定まっている。40歳の誕生日を迎えた玉鷲は「人間なんで迷うときもあるけど、基本をやれば自信を持っていける」と今も稽古を怠らない。肘やひざにサポーターはなく、体は若手のように張っている。 40代の幕内力士は昭和以降6人目。年6場所制となった昭和33年以降では旭天鵬(現大島親方)の40歳10カ月に次ぐ高齢記録だ。大島親方は「日本人は小学校から相撲をやっている子もいるけど、(モンゴル出身の旭天鵬や玉鷲は)10代後半の体が大人になりつつある時期から始めた。40歳で実質、30歳くらいの感じじゃないの」と〝相撲年齢〟の違いが長持ちの一因ではないかと指摘する。 玉鷲の相撲は押し一徹。「20年、頭から当たって、40歳でも頭で当たっている」。この日は、磨いてきた突き押しが遺憾なく発揮された。右に動いてきた翠富士を、すぐにとらえ、強烈な右のど輪を見舞って土俵の真ん中で押し倒した。 全く衰えを感じさせないが、先のことを考えていないわけではない。「あと2年、3年できるかどうか。幕下に落ちたらやめるけど、十両でもやるとか、やめるとかは言えない」。来年、小学生になる次男にも土俵の雄姿を記憶に残してもらいたいと考えている。 当面の目標は三役復帰だ。「人間の体は、ここまで成長するんだと見せたい。成長中なんで」。例年より気温が高い今年は宿舎で扇風機を使っているという。ベテランは、まだまだ燃えている。(宝田将志)