70年代にはロイヤルホストとコントラクト事業の礎をそれぞれつくっており、北九州市にロイヤルホスト1号店を開業するとともに、同市の関門自動車道めかりパーキングエリアにもレストランを設けた。

　両事業の店舗網拡大を支えたのが、福岡市に完成させていたセントラルキッチン（集中調理工場）だ。食材の下ごしらえなどを担っており、現在は東京工場との2拠点体制でグループ店舗に供給している。

資本提携

　一方、2020年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大ではグループ全体が打撃を受け、外食事業とコントラクト事業、「リッチモンドホテル」を展開するホテル事業が20年12月期決算で軒並み赤字を計上。グループの最終利益も275億円の赤字に陥った。

　経営再建のため不採算店の閉店や希望退職の募集に踏み切るとともに、大手商社の双日（東京）と21年に資本・業務提携した。ロイヤルHDの菊地唯夫会長は当時の記者会見で危機感を示し、「コロナ禍で毀損した成長戦略と財務基盤を再構築する」と述べた。

　提携の成果は生まれてきており、シンガポール・チャンギ国際空港に隣接する商業施設内に今年7月、海外初のロイヤルホスト直営店をオープンした。さらに、すしチェーンの銚子丸（千葉市）を含めた3社で来春にも米国に進出する計画を進めており、「3社のノウハウを生かし、現地で受け入れられる業態に仕上げたい」（ロイヤルHDの藤岡聡執行役員）考えだ。

九州から海外へ続々

　人口減少による国内市場の縮小を背景に、海外に進出する九州の外食企業は多い。

　長崎市で創業したリンガーハットは9月、カンボジアにちゃんぽん店の4号店を開業したほか、今月11日には、ベトナム進出を見据えて来年春に現地に子会社を設立すると発表した。国内外でラーメン店「一風堂」など約290店を展開する力の源ホールディングス（福岡市）も、年20～30店のペースで海外店を増やす計画を掲げる。

　大手と提携して海外を狙うのは、福岡を中心に焼き鳥店「焼とりの八兵衛」を運営する「ハチベイ　クルー」（福岡県糸島市）だ。同業の全国チェーン「鳥貴族」の運営企業と手を組み、5年で海外90店体制を目指す。

　日本総研の藤山光雄・主任研究員は「海外出店によって日本の様々な食が世界に浸透すると、『本場で食べたい』と来日する観光客が増える可能性がある。今後は、海外市場や訪日客に対応できる人材の確保と育成が一段と重要になる」と指摘している。