日本人が次期総裁に選出された「国際数学連合」とは?
先月、世界的な学術機関である『国際数学連合』の次期総裁に、京都大学教授の森重文氏が選出されたというニュースが流れました。国際数学連合は、数学のノーベル賞とも言われる「フィールズ賞」を運営する機関でもあるとのことですが、ネットで検索してもあまり情報は多くありません。はたして、どのくらいすごいことなのか。日本数学会理事長で、東京大学大学院数理科学研究科教授の舟木直久氏に聞きました。
「フィールズ賞」選出の権威ある組織
そもそも、国際数学連合は国際的な数学者の集まりですが、日本では「日本学術会議」が対応機関になっているように、数学者の機関だけにとどまらない権威ある組織です。おもな活動としては4年に一度『国際数学者会議(International Congress of Mathematicians = ICM』を開催しており、前出の「フィールズ賞」もここで発表されます。いわば、数学者のオリンピックを主催する団体といえるでしょう。 数学にはノーベル賞がありません。そのため、国際数学連合が選出するフィールズ賞は「数学界のノーベル賞」として、世界中の数学者の目標となってきました。ただし、賞金は数百万円ほどとノーベル賞に比べると少額です。また、受賞資格があるのは40歳未満の若手研究者に限られています。 毎回2~4名が選出され、日本人の受賞者は、小平邦彦氏(1954年)、広中平祐氏(1970年)、森重文氏(1990年)の3名です。森教授が受賞したのは「代数幾何学」の研究が認められてのこと。舟木教授によると、代数幾何学とは「代数的な方程式で定まる図形を幾何学的に調べる研究」とのことです。 ちなみに、数学界には賞金額が約1億円の「アーベル賞」が2003年に創設されました。フィールズ賞と異なり年齢制限がなく、選ぶのは国際数学連合ではありませんが、受賞者が国際数学者会議で講演するのは恒例になっているそうです。
日本の数学の力が認められてきた証
森教授が国際数学連合総裁に選出されたことは「日本の数学の力が世界に認められている証」と舟木氏も評価しています。頻繁に会合を重ねる欧米の学者に比べ、地理的な不利がある日本の研究者にとって「より日本の存在感を増していくきっかけになるだろう」ということです。 とはいえ、今年8月中旬に韓国のソウルで開催された国際数学者会議では、総裁に選出された森教授は多忙をきわめていたとのこと。公式な場での議長役などばかりでなく「連夜のパーティなどにも掛け持ちで出席されているようでした。大変だと思います」(舟木氏)とのことでした。