年収600万円、60歳で定年を迎えます。再雇用後は年収が「半分」になると聞きました。年金の「繰上げ受給」をすべきでしょうか?
定年退職後も再雇用で働く場合、年収がどれくらい変わるのか気になる方もいるでしょう。あまりにも下がるようであれば、年金の繰上げ受給を検討するケースもあります。 貯金があまりないようであれば繰上げ受給も収入源を確保する方法の一つですが、再雇用で働きながら繰上げ受給をする場合はどれくらい金額が変わるのか把握しておきましょう。 今回は、再雇用でどれくらい年収が下がるのか、また繰上げ受給をした場合としなかった場合の年金額などについてご紹介します。 ▼65歳から70歳まで「月8万円」をアルバイトで稼ぐと、年金はどれだけ増える?
再雇用だとどれくらい年収が下がる?
株式会社パーソル総合研究所が実施した「シニア人材の就業実態や就業意識に関する調査」によると、定年後に再雇用された方のうち、年収が50%より下がったと回答した方は全体の27.6%と最も多い結果でした。 さらに、50%程度下がったと回答した方は22.5%のため、50.1%の方が再雇用後は定年前よりも半分以上年収が下がっていることになります。 また、再雇用後の業務内容としては「定年前とほぼ同様の業務」と回答した方が55%でした。つまり、業務内容は変わらないまま、再雇用により人によっては大幅に年収が下がってしまうケースもあるようです。
もし60歳で再雇用をされるなら年金の繰上げ受給をした方がいい?
年金の受給開始年齢は、基本的に65歳です。そのため、60歳で定年をして再雇用されると、年金を受け取り始める65歳までは収入と貯金のみで生活することになります。 再雇用で年収が減ると、少しでも生活費を増やすための手段として年金を繰り上げて受け取る方法もありますが、繰上げ受給は1ヶ月繰り上げるごとに受給額が0.4%下がるため注意が必要です。 今回は、年収600万円の方が60歳まで繰り上げたときの年金額と65歳で受け取るときの年金額を比較してみましょう。なお、条件は以下の通りです。 ・国民年金は全期間納付済みのため老齢基礎年金額は令和6年度の月額6万8000円、年間81万6000円 ・厚生年金に加入したのは22歳からで平成15年4月以降 ・年収は60歳まで600万円 ・60~65歳は年収300万円 ・賞与は考慮しない ・老齢厚生年金額は報酬比例部分と同じとする ◆65歳で受け取る場合の年金額 まず、今回の条件で年金額を求めるには月収を基に決められる標準報酬月額と、全期間の平均標準報酬額を計算します。22歳から60歳まで(456ヶ月)の標準報酬月額は50万円、60歳から65歳まで(60ヶ月)の標準報酬月額は26万円です。 全期間の標準報酬月額を足して厚生年金の加入月数(516ヶ月)で割ると、平均標準報酬額は約47万2093円になります。 平成15年4月以降に厚生年金へ加入した方の報酬比例部分は「平均標準報酬額×0.005481×加入月数」で求められるため、受け取れる老齢厚生年金額は約133万5172円です。老齢基礎年金額が81万6000円なので、年間で合計215万1172円、月額約17万9264円受け取れます。 ◆60歳まで繰り上げた場合の年金額 先述したように、60歳までの標準報酬額は50万円です。60歳までの加入期間で計算するため平均標準報酬額も50万円となり、報酬比例部分は「50万円×0.005481×456ヶ月」で124万9668円となります。老齢基礎年金と合計すると、年間206万5668円、月額17万2139円です。 繰上げ受給をすると、65歳から繰り上げた月数に応じて受け取れる年金額は減少します。60歳まで繰り上げると、減少率は24%です。60歳時点の年金額206万5668円が24%減少するので、60歳まで繰り上げると年金額は約156万9908円、月額約13万826円を受け取れます。 さらに、働きながら年金を受け取ると、在職老齢年金の対象です。収入によっては、在職老齢年金の調整により受け取れる年金額がさらに減る可能性もあります。そのため、貯金にある程度余裕があるのなら、繰上げ受給をせずに65歳から年金を受け取り始めた方が、老後の生活にゆとりができるでしょう。