《ブラジル》過剰投薬で患者死亡の疑い=家族の疑問制し「今日は注射4本」
多発性骨髄腫の治療を受けていた69歳の男性患者に、看護師が誤って一度に4回分の化学療法薬を投与し、死亡させた疑いが持たれている。男性は19日にこの化学療法を受けた直後から体調を崩し、22日に別の病院に転院後、23日に死亡した。現在も警察による捜査が進められており、投薬を行なった看護師は事件解明まで解雇されたと、26日付G1などが報じた。 この医療事故は、ミナス・ジェライス州ベロ・オリゾンテ市の高齢者向け医療施設「メジ・セニオル」で発生した。被害者ニルトン・カルロス・アラウージョさんは、毎週月曜日の午前11時に同院を訪れ、骨の転移癌治療のためにボルテゾミブとゾメタの投薬を各一回分受けるのが習慣だった。 19日に病院に付き添った娘カロリーナさんによると、通常1回につき1本しか投与しない薬瓶が、4本もトレイに載っていたため不審に思い看護師に質問したところ、「今日は4回注射を打つことになっている」と告げ、すぐに投薬を行ったという。その日担当した看護師は、いつもと違う人物だったという。 その日の午後4時ごろニルトンさんは吐き気、嘔吐、激しい頭痛などの体調不良を訴え始めた。だが娘はこれらの症状は化学療法を受けている患者にはよく見られるものであり、あまり深く考えなかったという。 だが普段と違って午後8時頃になっても症状がおさまらず、心配した家族はニルトンさんを同院に連れて行き、点滴と投薬治療を行なった。自宅で一夜を明かした翌朝も吐き気と痛みが続いていたため、再び病院で前夜と同処置を繰り返した。 21日になって、娘が病院管理者と話し合った後、ニルトンさんは集中治療室が完備された別の施設に入院することになった。その際、4回分の投薬についての疑問を何度も問いただしたが、無視されたという。 「病院側から、父が加入していた保険では、別の大病院は適用外と言われた。しかし、『これはあなたたちのミスだ』と強く訴えたところ、転院されることになった」と説明した。その時、管理者はそのミスは確かに病院側のものだと認めたという。 転院後、ニルトンさんは抗生物質と鎮痛剤を投与され、すぐに回復の兆しを見せたため、カロリーナさんは兄に交代をお願いし、自分は一旦帰宅した。その後、兄から電話があり、「部屋から追い出され、ドアが閉められ緊急手術が始まった」と聞かされた。 彼女と母親が病院に到着した時には、ニルトンさんは既に気管内挿管され昏睡状態にあり、翌日22日に家族は警察に被害届を提出。ニルトンさんは23日に帰らぬ人となった。 メジ・セニオルは声明の中で、「今回の事態を深く反省し、関係するすべての状況を理解し、事実と責任を確認することを目的として、患者のケースについて詳細な調査を実施していることをお知らせする」と述べ、事件が解明されるまで投薬を行なった看護師を解雇したことを明らかにした。