鬼の子孫と伝わっている、珍しい名字「五鬼助」さん。奈良県で宿坊を営んでいます
珍しい名字:五鬼助(ごきじょ)
奈良県下北山村の宿坊を営んでいる家に「五鬼助」という珍しい名字の家があります。この家は鬼の子孫と伝わっています。 7世紀、大和に役小角(えんのおづぬ)という人物がいました。役行者ともいい、修験道の開祖として知られています。この役行者は鬼を従えており、その中に前鬼・後鬼という夫婦の鬼がいたとされています。夫婦の間には5人の子どもがいました。 あるとき、役小角は夫婦に「里に下りて人間として生活するように」と言い渡しました。そこで夫婦は、子どもとともに下北山村に住み着きました。この地は今では前鬼という地名になっています。 やがて5人の子どもは独立し、それぞれ宿坊を構えて修験者の世話をするようになりました。この5人の子どもが名乗った名字が、「五鬼熊」「五鬼童」「五鬼上(ごきじょう)」「五鬼継(ごきつぐ)」「五鬼助」という名字でした。 現在は、五鬼助家の「小仲坊(おなかぼう)」という宿坊のみが残っています。 なお、名字としては「五鬼上(ごきじょう)」「五鬼継(ごきつぐ)」も現存しますが、「五鬼熊」と「五鬼童」は消滅したといいます。
森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家 1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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