「カルタ」の語源はポルトガル語の「carta」。これ英語ではなんという単語になる?【知って得する日本語ウンチク塾】
「カルタ」は ポルトガル語の「carta」が語源
みなさんは、「カルタ」と言われたとき、どのようなものを思い浮かべますか。おそらく、いろはガルタ、うたガルタ、はなガルタ(花札)のどれかでしょう。「カルタ」にはこれら以外にもいろいろな種類がありますが、そもそも「カルタ」ってどのような語だと思いますか? 「カルタ」は「かるた」とも書きますが、多くの辞書は「カルタ」と見出し語はカタカナで表示しています。これは、もともとは cartaで、ポルトガル語だったからです。カルタという語は、16世紀後半ころにキリシタンの宣教師かその周辺の人が日本に伝えたと考えられます。 「カルタ」の日本でのもっとも古い例は、「長宗我部氏掟書(ちょうそかべしおきてがき)」(1596年)の「博奕、カルタ、諸勝負令停止」だとされています。博奕(ばくえき=ばくちのこと)、カルタ、諸勝負の停止を命ずるという意味です。「長宗我部氏掟書」は土佐(高知県)の大名だった長宗我部元親・盛親父子が領国支配のため制定した分国法で、「長宗我部元親百箇条」ともいいます。ここでの「カルタ」は、この当時ポルトガルから伝わった「ウンスンカルタ」と呼ばれるものでしょう。
カルタは、カードやカルテと同源の語
ポルトガル語のcartaは、英語では card (カード)です。英語ではトランプのことをカードといいます。そして、ドイツ語ではKarte(カルテ)です。カルテは日本ではおもに医師の診察記録カードのことをいいますね。つまり、カルタは、カードやカルテと同源の語なのです。 日本では「カルタ」に「歌留多」「加留多」「骨牌」といった漢字を当てます。「歌留多」「加留多」は「カルタ」の音に漢字を当てたものです。「骨牌」は、中国で象牙,獣骨,角などで作った札を使った「骨牌(こっぱい)」というゲームがあり、その字を当てたようです。
小倉百人一首が「歌貝」と呼ばれていたワケ
お正月にやることが多い「小倉(おぐら)百人一首」は「歌ガルタ」と呼ばれていますが、古くは「歌貝(うたがい)」と言っていました。 「貝」の字があるように、貝の両片を合わせる平安時代の遊び「貝合わせ」から発展したものです。「歌貝」は蛤(はまぐり)の両片の内側に和歌の上の句、下の句を書いて、それを取り合わせる遊びです。のちに、貝に似た将棋の駒形で金銀箔押しの厚紙を用いるようになり、さらに西洋カルタの影響から西洋カルタ式の長方形となりました。 現在のような文字のほかに絵札が加えられ、内容も「小倉百人一首」にほぼ固定化して正月の遊びとなったのは江戸中期ころからのようです。 【記事監修】 神永 暁|辞書編集者、エッセイスト 辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。文化審議会国語分科会委員。著書に『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。
文・構成/HugKum編集部